2013年2月27日水曜日

物価上昇率2%

物価上昇率2%はゴールなのか手段なのか。

原理主義者は2%はゴールであり、日銀はそれを達成する全責任を負うとする。それを真に受けて、金融政策だけでデフレは脱却できると理解している人も多そうだ。

穏健派は、2%を量的緩和のゴールとすることはあくまでも高度で戦略的な「手段」であり、財政政策と成長戦略とかみ合わせることでデフレ脱却は成功するとしている。アベノミクスに賛同する良識者はおおむねこのスタンスなのではないか。

前者と後者では、政府や日銀の取るべきスタンスと潜在的なリスクは大きく異なってくる。
その辺があいまいなことを反リフレ派は一番懸念しており、議論がなかなかかみ合わない最大の原因になっているのではなかろうか。

安倍総理は日銀の独立性はさすがに担保したいと思っているようなので、やみくもに金融緩和だけをを暴走させて通貨の信任を毀損することまでは望んでいないということだ。通貨の信認を維持するということは不可侵でなければならない。その中で、物価上昇率2%を求められるわけだから、新日銀総裁は大変だ。

もし本当に、政府の真意が物価上昇率2%というのは目標と見せかけた手段であるならば、あまり大きな問題は起こらないはずだ。2の矢3の矢との相乗効果で経済成長を取り戻し、その結果として2%のインフレが実現するというのが理想的な流れのはずだ。

実際に何もやらなくても、株価は大きく上昇し、為替もドル高円安に振れている。物価上昇率2%になるまで金融緩和を徹底的にやりかねないと市場参加者は考え、すでに行動を起こしているからだ。そうした意味では、物価2%上昇はゴールだといい続けることこそが最大の効果を生むということである。実際に、そこまで量的緩和を続けるかどうかは今のところ重要でない。反リフレ派の心配は現時点では杞憂ではある。

ただ、円安による輸出企業の採算向上に大きな期待をかけている点は注意が必要だ。確かに円安の即効性はあるが、長期的に円安メリットを享受し続けるためには、世界経済が本当に立ち直るかどうかということが重要なのである。為替政策は不況の押し付け合いという側面を持っているからだ。G20で名指しこそされなかったが、この問題は水面下ではくすぶっている。

あまりにも株価が堅調だったため、しばらく欧州問題のことを忘れていたが、イタリアの政局問題はは改めて、世界経済に不安要因があることを思い出させてくれた。アメリカの立ち直りはペースはゆっくりだが、確実に回復に向かっているように見える。これからは、国内政局もさることながら、海外情勢にも目が離せない。