2013年9月1日日曜日

消費税増税

この期に及んで、議論を最初からやり直している様子に驚きを隠せません。

5%の消費税引き上げのほとんどが、年金国庫負担金引き上げなど、これまですでに実施されている政策の付け払いに回されて、財政健全化や社会福祉目的に使われる分は、ほとんどないことはすでに去年の8月時点でわかっていたことです。

有識者の中にも、改めて社会福祉目的優先なんてわけのわからない前提条件を上げるなど、どうしたことでしょうか。

安倍首相は方法論を誤ったとしか思えません。
きちんと着地できるのでしょうか心配です。

2013年7月30日火曜日

浅川元社長「詐欺は無罪」 AIJ事件、最終弁論で一転

結局最後まで浅川は変わらなかったというのが正しい表現だと思います。

浅川は、最後まで自分は不正を働いたとは思っていないということです。

自分の行為をすべて認めたうえで
それを世間や法律が「詐欺」というなら認めるが、

自分の定義では詐欺ではないという主張です。

最後までこの溝は埋まらなかったということだと思います。

残念なことですが、この人に何を言っても無駄なようです。



2013年7月24日水曜日

年金改革の行方

参議院選挙も終わり、与党が参議院も過半数を握り念願のねじれ解消が実現した。
少なくとも3年間はよほどのことがない限り国政選挙はないわけで、これまで本腰を入れて取り組みにくかった痛みを伴う改革に取り組む絶好のチャンスでもある。

年金制度に政府がどう取り組むのか。

改めて注目してみたい。

2014年には5年に一度の財政検証が控えている。2009年度は予定を超える積立金の取り崩しが進んでいるのもかかわらず、100年間の予想運用利回りを4.1%に引き上げることで、つじつまを合わせ100年安心設計は予定通りだとした。

2012年度の運用利回りは10%弱を達成した。
分散投資しているので、あれだけ日本株が上がってもこの程度との見方もある。

果たして今後100年間4.1%を達成できるのか。

日本株の組み入れ比率を引き上げて株高と心中をめざすのか。

2%のマイルドなインフレを達成し、年金支給額をマクロ経済スライドに従って、0.9%ずつ引き下げていくのか。

選挙前は、物価上昇にあわせて年金支給額を引き上げる必要があるとトンチンカンな答えをしていた与党は、果たして豹変するのか。

あるいはマクロ経済スライドを見直して、別の理屈で100年安心を設計しなおすのか。



2013年7月13日土曜日

マクロ経済スライド

物価上昇時に年金支給額をわからないように減らすマクロ経済スライド。
100年安心設計のキモ。

その制度が存在しているにもかかわらず

7/13のサタズバで

「物価上昇にあわせて年金額を引き上げべきか」の質問に、みんな、緑の党以外全員YES。

共産党のYESは筋が通っているが、

自民・公明がYESはいかがか?

共産党に、「法律変えるつもりありますか」と詰められ、

自民・公明しどろもどろ。




選挙を前にすると、ここまで政治家はいい加減なスタンスになるものか。

これでは、共産党の票が増えるのも当然なんだろう。

2013年7月4日木曜日

参議院選に突入



年金積立金の運用益が11兆円+10.2%でようが

年金積立金管理運用独立行政法人の運用の見直し会議が始まろうが

年金詐欺事件の求刑が行われようが

年金問題がニュースや争点になる気配は感じられません。
もはや長期的な課題は誰も関心がないようです。

三本の矢に次いで
TINA(There is no alternative)というキャッチフレーズが登場しました。

まずは、経済成長。
諸問題はそれからだ。

ということです。

年金問題は本当に悩ましい問題です。
より少なくなる労働人口層が高年齢者を支えるわけですから、単年度の評価益が多少出たぐらいでは解決しません。

当たり前のことをいまさら騒いでもしょうがない。
これしか、解決策はないんだ。

TINA

2013年7月1日月曜日

機械との競争

機械との競争

刺激的な現状分析が並ぶ。

デジタル技術の進歩が早すぎて、必要な労働者の数が減る
平均的な人間の仕事はなくなる
一部のスーパースターとロボットでは対応できない肉体労働に二極化する
経済全体は成長しても所得は伸びない
場合によって賃金は最低生存水準すら下回る

しかし、一筋の光明も

人間は非線形処理のできる最も安価な汎用コンピュータ
人間の直観力と創造性を機械の持つ定型処理能力・反復計算力・一貫性と組合せることで
最強のチームが作れる

デジタル革命の驚異的なスピードは驚異でもあるが、新たな進化のきっかけでもあるのだ。

成長戦略を考える上で、議論の一翼を考えさせてくれます。


2013年6月30日日曜日

北海道の厚生年金基金理事長が収賄容疑で逮捕

この基金もAIJ被害基金である。
長野・福岡に続きまたもや基金の不祥事である。

意外にもAIJの贈収賄や横領は立件されなかったが、関係基金の摘発が続いている。
私の実感だが、AIJ周りの捜査は徹底的に行われたと思っている。
被害基金に対する、営業経過はすべて再現され裏付けはとったと思っている。

接待や贈答に関して、社長の浅川は徹底的に忌み嫌っていたというのは事実である。
そのような営業を情けないスタイルだとことあるごとにいっていた。

余罪が出て来ないことについては、意外感はない。

2013年6月24日月曜日

「年金詐欺」を読んで

年金詐欺 AIJ事件から始まった資産消失の「真犯人」

年金情報の編集長としてAIJを追い続けた著者ならではの視点と、年金情報として築き上げられたネットワークから上がる情報に基づいてつづられているだけに読み応えがある。

疑わしき段階で専門誌としてどう扱うか、著者の苦悩する姿が随所に現れる。

「騙しているわけではない」
「やむを得ない」
「一層懸命だ」
「資産を取り戻したい」
「破綻するはずがない」

浅川被告が語るフレーズは主語をそのまま、年金、厚生年金基金、国家財政、そしてそれらをつかさどる官僚、政治家、年金基金関係者に置き換えても通用してしまう。

受益者や国民もなんとなく問題を見て見ぬふりをする。

現在の日本が抱える問題の一端が浅川という人間によって表に出た。

しかし、浅川の犯行は免責されるものではない。
求刑や判決が甘いものになることは決して許されない。
それは、あえて言いたい。

同じような問題に対しても我々は見て見ぬふりを続けるのではなく、解決策を模索していかなければならない。改めて強く感じた。




2013年6月22日土曜日

盛り上がらない社会保障年金問題

年金詐欺事件から約1年が経過。

浅川被告の判決が近日中に出るのではないかといわれておりますが、これで何かが大きく変わる気配もありません。
単なる1つの金融詐欺事件として終わるのでしょうか。

年金情報の編集長が
年金詐欺 AIJ事件から始まった資産消失の「真犯人」
を出版して、問題提起をされていますが、いまひとつ反応はよくないようです。

年金問題は本当に悩ましい問題です。
より少なくなる労働人口層が高年齢者を支えるわけですから、つじつまがあわなくなって当たり前です。

当たり前のことをいまさら騒いでもしてもしょうがないというあきらめの気持ちが強いのかもしれません。解決策といえば、インフレか、高成長の復活しかありませんが、その少ない可能性に賭けているということかもしれません。

なにやら、とってもいごこちのよくない均衡状態です。


2013年6月15日土曜日

成長戦略うんぬんの前に

成長戦略に新味がないのは、今に始まったことではありません。

時の政権は常に成長を目標にしますから、特別に変わったことが突然でてくることは少ないわけです。

今回も、政府自民党はあらかじめ「実行力が違う」と伏線を張っていました。

ところで、そもそも論として高成長が必要なのか?
何を成長の尺度にするのか?

という基本的な議論が抜けているような気がしてならないのです。

成長すれば、それはみんなハッピーには違いありません。
痛みを伴う負担は先送りができ、うまくすれば何もせず解消できるかもしれません。

政治家的には
成長を政策の大目標に掲げ、
目先の自分の政治生命が守れれば安泰です。

官僚も政治家が腹を決めない限り低成長を前提にした政策案を考えることはできません。

低成長だと何がまずいのでしょうか?
少なくともこれまでの借金は返せません。
みんなで分担するしかありません。
急激に生活が良くなることはありません。

あとほかに、まずいことは何かあるのでしょうか?
そしてそれは、本当にまずいことなのでしょうか?

逆説的ですが、
高成長をあきらめ低成長に合わせた仕組みを作ることが、
高成長へのスタート台になるような気がしてならないのです。

少なくとも、低成長を政策に打ち出す政党が現れその是非を真剣に議論することが今こそ必要な気がしています。

アベノミクスの是非をめぐる議論の前にすべきことではないかと思います。

前回の選挙では、民主党政権の全否定に紛れてその辺がなんとなくあいまいになっているような気がします。
国民も危うさを伴う成長戦略には必ずしも手放しで賛成ではないと思います。


2013年6月14日金曜日

民主党ははっきりと対立軸をだしたらどうだ

煮え切らない政党をいつまでも続けるのではなく、
はっきりとした対立軸を打ち出したらどうなんだろうか。

政策によって是々非々といっている場合ではないだろう。

たとえば自民党に対抗して「低成長戦略」というのはどうだろう。

背のたけにあった成長をめざし、インフラや制度、仕組みもそれにそって大胆に組み替えていくもの。

バラ色のシナリオにはならないが、とことん現実論戦を追求するというのもありかと思う。

もちろん、共産党とも社民党とも違う考え方で

でも、やっぱり民衆党には無理な注文か。


2013年6月12日水曜日

インフレターゲット

インフレを2年以内に2%に何が何でもする。
という考え方は本当に正しいのだろうか?

正しさの根拠は


  • アメリカが量的緩和で成功している
  • 各国がインフレターゲットを採用している


の2つしかない。

しかし、どの国も2%のインフレを作るとは言っていない。

緩和しすぎてインフレになったら困るので、2%を政策変更のターゲットにしているに過ぎない。
ターゲットの意味が違う。
覚悟とか気合の象徴として2%という数字を使っているなら、それはかまわないけど、それを本当に目標にするというのことでいいのだろうか。

市場がはっきりと拒否反応を示しているのではないだろうか。


日本のデフレにしても金融緩和が足りなかったとする理屈も今一つ説得力がない。

結果として起こるインフレをターゲットにする考え方はどこかがおかしい。

金融政策を前面に出す政策はやはり何かがおかしい。

リフレですべてが解決するという考え方にはとうてい賛成できそうもない。

2013年6月11日火曜日

どこへ向かう日本丸

安倍船長と黒田水先案内人。
船出は華々しかったわりにはここにきてのあわてぶりは心もとない。
長い船旅なのに、本当に大丈夫なのだろうか?
想定内といいたいところかもしれないが、それにしてはドタバタが過ぎる。

安易に考えていたとしたら余りにも情けないのだが。
成功を信じるのもいいが、いろいろなリスク要因は想定しておいていただかないと。
この難局はこれから先もますます難易度を増すだろうし。


やはり過度に金融政策に頼りすぎていたことが裏目に出ていることは間違いない。
早めに頭の切り替えを行うべきだと思う。
参院選での勝利で完全な議会運営を手にしてから難しい課題を先送りしていたこともある。

楽な道を歩めるはずはないんだから、先手先手を取って動くしかないのにどうも小首を傾げたくもなる。首相は懸命にやっているように見えるのだが...

とにかく、支持率があるうちに痛みのある改革に手を付けておかないと、いったいいつ手をつけられるのか。

日本丸の前途はかなり厳しくなったと思う。
なんとか立て直して欲しいと願う。


2013年6月7日金曜日

3本の矢ではなく1本の矢

成長戦略が市場に受け入れられない原因は

ゴマカシ感と先送り感が目立つからではないでしょうか。

参議院選までは安全運転で行きたい。
そういう目論見かも知れませんが、選挙が終われば終わったで、果たしてそれは変わるのか?

それに対して市場が厳しい目を向けているのではないかと思います。

3本の矢という言い方もそろそろ卒業して、1本の矢にまとめるべきではないでしょうか。そもそも金融政策は日銀の責任なのですから。

すべてが、痛みなしでうまくいくなどムリなことは国民も理解しているはずです。
バズーカのインパクトははげましたが、金融緩和はまだ効いていますし、これからもまだ効くでしょう。

政治の真価が問われる局面ですが、いかがでしょうか。

2013年6月6日木曜日

冷徹な市場

4月4日に黒田バズーカが発射されて急伸した株式市場もそのほとんどの上昇分が剥げ落ちてしまった。

金融政策に対する過度な期待が早めに修正されただけでも良しとすべきではなかろうか。
これまで、金融政策への依存度が高すぎると思われてきたが、成長戦略が明らかになるにつれそれが現実のものになったという感じかもしれない。

どうひいきめに見ても
黒田バズーカに比べて成長戦略のインパクトのなさは否めない。
10年後に所得150万円がむなしく響く。

目新しさはないかわりに実行力が違うと伏線を張ってはいたものの
改めてそのとおりだと、失望感は大きい。

さすがに「期待」の金融政策、「気合」と実行力の成長戦略のコンビでは力弱すぎる。

もともと狭かったスルーパスの通り道がますます狭くなってしまった。

次元の違う部分はすでに殆ど剥げてしまったのだから、
いまさらあんまりこだわる必要もないはずだ。
ここは早め軌道修正をしたほうがいいと思う。


金利が上がらない金融政策に軌道修正するということ。
つまり残存長期の国債の買い入れをやめる代わりに十分な資金供給をする。
そのためには意味のない物価目標はやめるということ。


金融政策の下支え効果と、時間を稼ぐ効果は引き続きあるはずで、これを大事に政策へとつなげてほしい。

2013年6月1日土曜日

詐欺にはいろいろあれど

事業が失敗して、それをごまかしながら営業を続ければ最終的には詐欺になってしまいますが、先送りとごまかしの線引きは非常にあいまいです。

特に財務諸表の操作は、グレーなものまで含めると、詐欺となる寸前のものはごまんとあると思われます。

安愚楽牧場もやはり最初から詐欺だったわけではないとように思えます。
しかし、ある一線を越えた時点で、明確に詐欺になってしまったのでしょう。

その一線とは事業が継続できなくなって陥る自転車操業ということなんでしょう。経営者はすくなくともこの時点でギブアップしなければなりません。

この一線を越えてしまった結果は厳罰にすることしかないと思います。
そう考えると、日本の詐欺罪に対する刑罰はまだ軽いように思えます。

ここのところ、ネットや電話を利用した不特定多数爆撃型の詐欺が増えているようです。
つぎから次へとあきれるほど新種が登場してきます。

自分のところへも、メールを開けさせようとして本物そっくりのタイトルが手を替え品を替え送られてきます。

そんなものにひかっかるはずはないと思っても、ある一定の確率で騙される人は出るようです。
詐欺軍団は、その確率を信じて、とにかく数を打つ、数を打つための名簿やアドレスを手に入れるということがポイントになっているようです。

この詐欺のエネルギーをもう少し生産的なものに向ければ、景気浮揚にも役に立つと思うんですが、こういう輩のすそのが広いことが、景気不振のひとつの側面なのかも知れません。

2013年5月30日木曜日

アべノミクスはもともと難易度の高い政策だったはず

一向に抜け出せないデフレ。
実質破たんしている年金制度。
税収よりよりも大きい単年度財政赤字。

何もせずに座してこのまま死を待つか、
少しでも地道な解決を目指すか、
一発勝負をかけるか。

追い込まれた状況の中で、自民党は一発勝負をアベノミクスにかけた。
財政ファイナンスと見做されるりクスも辞さない覚悟を決めた。
だって、このままでは日本は沈没してしまうのだから。

熱狂的なリフレ派と
あまりにも情けない民衆党政権への反動による支持で政権をとったが、
タイミングよく円安株高が進んだおかげで、徐々に国民の多くが安倍政権に命運を託すようになった。

しかし、冷静に立ち止まって考えると、もともとそんなに簡単なチャレンジではなかった。

経済学的にも証明されていない未知の世界だし
景気回復の兆しが見えるアメリカも、すべてがQEのおかげだとも思えない。

そいういうことにふと気が付いた。
そういう状況ではないかと思う。

過度に悲観する必要もないが、楽観過ぎるのもどうかということだろう。
それだけ政権は難しい課題にチャレンジしているということ。

2013年5月28日火曜日

正体を現した本尊と現さない本尊

黒田総裁の次元の異なる金融政策は、中央銀行のヘッジファンド化を宣言したようなものでした。巨大なヘッジファンドですが、手の内を最初にすべて見せてしまいました。勝負をかけたともいえます。

すべてを最初にすべてを見せることで、相当のインパクトを与えましたが、一方でその後の手足は制約され、インパクトが薄れると、逆に影響力は次第に薄くなってしまいます。

それに比べ、資金力は日銀には比べようがなくてもその手の内行動が読めない本尊の動きは市場にインパクトを与えます。

正体を現さない本尊の動きが重なれば、木曜日のような市場の動きは起こりうるのでしょう。正体をさらしてしまった日銀の金融政策の影響力はここからはさほど大きくない可能性が高そうです。

あとは口先介入と、長期金利が過度の変動をきたさないようにうまく調節をすることぐらいしかないのかもしれません。

2013年5月26日日曜日

株価の暴落は歓迎すべき

アベノミクスは失敗に終わるという論調が一部出ていますが、それもいかがなものかと思います。
中国まで経済紙で言及したとも言います。

もともと、金融緩和を突破口にしたアベノミクスの成功はナローパスを通す非常に微妙なものとされていたと思います。

それが、順調に進み過ぎる円安株高で楽観論が広がりすぎたところに警鐘が鳴らされたと考えるべきだと思います。

まだまだ、全然のりしろがあるわけで、その間にどんどん政策を出していけばよいはずです。

早めに目の覚めるような衝撃があったのはむしろ歓迎すべきことだと思います。

日曜討論もアベノミクスの大反省会さながら。野党も、いたずらに自民党を責めるのではなく、一致協力してホンモノの改革に一緒に取り組んでいただきたいと願います。金融緩和が時間を買う政策にすぎないことに気づかないと、先週の下げどころでは済まないことになると思っています。

2013年5月24日金曜日

激震走る

久々の大幅下落。
ほとんど調整のなかった相場に大きな衝撃が走りました。

期待の上に作り上げられた相場ですから、振れが大きくなるのはやむを得ないでしょう。

出口戦略に向かうと思われるアメリカが、いきなり舵を切るのではなく観測気球を上げながら慎重に進めると思われますので、まがいなりにも実体経済がついてきているアメリカが大きく崩れることはないでしょう。そうであれば、日本もこれが本格的な調整につながることはないでしょう。

しかし、日本はアメリカと違うということは意識していく必要があると思います。
なんだかんだ言いながら、アメリカは出口に向かっています。

日本はようやく入口に立ったばかりで、株高円安以外の成果はまだ大きくは現れてはいません。

政治家は参議院選挙を控えて守りに入る姿勢が目立ち、余り前向きな発言が聞こえてこないことこそが心配です。



2013年5月23日木曜日

NTTが確定拠出年金移行を提案

OBの年金減額が認められなかった過去を持つNTTですが、再び動きました。

確定拠出年金への移行は大きな流れになりそうです。

公的年金では問題になるインフレ対策は、もともと企業年金にはインフレ調整はないのであんまり大きな問題ではないですが、やはりそれに対応できる商品の開発が急がれると思います。

いちばん簡単なのはインフレ連動国債で運用するコースや、商品などを含んだファンドの開発でしょう。同時にこれから、ますます投資家教育は重要になりそうです。

年金問題を解決していくには、

自助努力型への移行
インフレ対応商品の拡充
長生きリスクに対する共済システムの導入
生活困窮者への保護

これらの組み合わせによって、既存の国民年金や厚生年金を大幅改革していくしかないと思います。アベノミクス第4の矢として大胆な提言が出ることを期待します。

2013年5月21日火曜日

結果としての円安か手段としての円安か

もちろん、はっきりと線引きすることはできません。
手段としての円安だと、海外から受け止められると余分な摩擦が生じます。
通貨安競争に火を注ぎかねません。

その辺をうまくやる必要があるわけですが、麻生さんはうまくやってるように見えます。
どうみても今のところ、円安は手段になってますけどね。ここまで順調に来ただけに、慢心は禁物です。麻生さんは調子に乗って口を滑らさないことだけはお願いします。

日銀の資産買い入れのうち、ETFの買いはこの水準では余分ではないかという気もしますが、どうなんでしょう。
むしろ、これまで購入した残高を一部放出して、市場の価格発見能力を試すとともに、次の一手を読みにくくするという効果を狙ってもいいのではないかとも思います。

2013年5月17日金曜日

作家橘玲が国民年金基金に提言


国民年金基金についての私的提言

話題になりにくい年金問題ですが、かなり「いいね」や回覧されています。

年金のなかでも、さらに話題になりにくい国民年金基金についてベストセラー連発作家の提言です。

国民年金基金はわりと新しく、まだ本格的に支給が始まってないので、政権のパワーがあるうちに解決してしまえば、今後の年金問題解決への糸口になるのではないかと思います。

国民年金基金は自営業者が国民年金に上乗せして、任意で個人が行う年金制度です。芸能人やすポーツ選手がたまに宣伝しています。

特徴は

予定利率によって支給額が加入時に決められている。
インフレ時の対応がない。

という2点です。

特に、90年代の初期に加入した人たちの予定利率が高いため、将来の支給に必要な積立金が不足しています。

橘氏は支給が本格化する2015年までに、制度を廃止して積み立てたお金は返還することを提案しています。
そのうえで希望者は、確定拠出年金に移行させて、インフレ連動債で運用するコースが選べるようにすべきであると述べています。

身動きが取れない厚生年金や厚生年金基金に比べ、まだ手の打ちようがありそうです。
これすら、解決できないようでは、年金問題は永遠に解決できないでしょう。

支持率の高い今こそ政権の英断が求められます。

2013年5月16日木曜日

戦力全投入


インパクトを最大限出すため、2年間でやることは全部しめし、戦力の逐次投入はしないと、大見得を切った異次元の金融緩和で、株高円安は想定以上に速いペースで進みました。


債券から株、リスク資産へお金が流れることは今回の次元の異なる量的緩和の狙い通りです。
しかし、長期金利の上昇は予想外。

想定では、長期金利の上昇は抑えこめるはずでした。

しかし、国債買い入れは計画的に2年間にわたってやらなければなりません。
手の内を最初に全部見せた作戦が、当面の手足をしばってしまうことになったのかもしれません。


まだ、マネタリーベース2倍までは全然余裕があるので、国債を買いまくって長期金利の上昇を抑えることは可能です。

しかし、実体経済に先行して金融市場が走りすぎるより、長期金利の上昇が多少ブレーキがかかってもいいのではないでしょうか。

ここまでで、金融政策の効果は十二分に出ています。あとは、長期金利の急上昇を招かないように日銀は黒子に徹し、いよいよ金融政策から政治にバトンタッチすべきときではないでしょうか。


2013年5月14日火曜日

長期金利上昇


量的緩和にもかかわらず、長期金利は上昇を始めました。

そもそも、日銀の買い入れに応じるかどうかは金融機関の任意です。
一方で、日銀は金融機関がリスク資産にお金を振り向けることを「期待」しています。

しかし、この理屈は何か変です。

この順番でお金が流れるなら、金融機関はわざわざ日銀の国債買い入れに応じなくても、直接市場で売ってリスク資産を買えいいのです。

5/の日銀レポートは

運用先に困るところまでは金融機関は買い入れには応じないどろうといっています。

裏を返すと国債買い入れが進むのは、金利が上昇し国債が下落して金融機関が国債を売却したくてもできなくなったときだとも読めます。 また、その場合は新規国債の消化が困難になっている状況も考えられますので、日銀の国債引き受けに近い状態であることも考えられます。

最近では誰も口にしなくなりましたが、
金融緩和が成功するかどうかはナローパスを通すようなものだ
ということが、改めて意識されます。

2013年5月11日土曜日

年金詐欺 AIJ事件から始まった資産消失の「真犯人」

年金情報編集長 永森秀和氏が表題の著書を近日中に出されるようです。
内容は厚生年金基金制度を操ってきた厚生官僚の意図について書かれるのだと理解しています。

不思議なのは新刊情報が外務省のツイッターで流れたことです。ただ単に事務方の機械的な作業の中で流れただけだと思いますが、どこよりも早く流しています。???

なかなか、年金問題については一筋縄ではいきません。積み立て不足は明白なのですが、なかなか、経済成長を前提にしない設計を前面に出して負担を求めるわけにはいきませんから、どうしても超楽観シナリオで先送りを続けるしかありません。

インフレで大幅に年金価値が減価すれば、あいまいなまま問題を着地させることはできるかもしれません。その腹積もりがやはりあるのではないでしょうか。

2013年5月7日火曜日

期待に働きかけるのは政治責任からの逃げに終わらせないで欲しい

日銀の展望レポートは物価上昇率見通し2%に沿った内容になりました。

日銀の国債買い入れが
物価上昇を引き起こし
景気が良くなる

というシナリオが実現するかどうかは、日銀の断固たる姿勢を国民が信じ、明日はよくなることを「期待」して消費・投資を拡大するかどうかにかかっています。

「期待」がすべてです。経済学的には証明されていませんし、決着はついていません。だから、壮大な実験といわれているわけです。

しかし、よく考えてみますと「期待」に期待するならなんでもいいわけです。それこそ、政治の取り組み姿勢でいいわけです。景気対策、構造改革、財政改革、社会保障改革なんでもいいわけです。政治に期待して国民が明日はよくなる「期待」を持てれば、そもそもこんな壮大な実験に頼る必要もないわけです。

3本の矢4本の矢といっていますが、結局は政治では「期待」を生めないから、金融政策にすがる。こういわれないように頑張っていただきたいと思います。

2013年5月5日日曜日

なかなか普及に弾みがつかない確定拠出年金

全日空・パナソニックと確定拠出年金導入の動きが広がっています。制度導入後10年以上もたつのになかなか導入に弾みがつきませんでしたが、今年はいい機会になるのではないでしょうか。
  • 金融市場が大きく動き資産運用に関心を持つ人たちが増えている。
  • 株式組み入れ比率の高かった人たちの運用利回りがプラスゾーンへ浮上してきた。
  • 厚生年金基金の原則廃止の方向が決まった。
このチャンスに普及に弾みをつけるべきなのではないでしょうか。
これまで、なぜ普及が進まなかったというと、どんなにうまく資産配分を選んだ人でも、運用の成果がほとんど出なかったという要因が一番大きいと思います。今回の上げ相場で、確定拠出年金の時価評価が大きく増加した人たちが続出しているはずなので、その人たちの声、実績、経験を広くアピールしていくべきではないでしょうか。
 

2013年5月1日水曜日

AIJ事件とMRI事件

全体的な論調としてはMRI事件のほうが悪質だとする意見が多いようですが、違和感があります。
最初からだますつもりの度合いがより大きいということなのでしょうか。

しかし、最初の度合いやつもりは本質論からいえば関係ないはずです。
結果がすべてであるという考え方をしない限り、この手の犯罪がなくなるとは思えません。

ほとんどの大型粉飾・詐欺事件は、最初は小さな出来事から始まっています。
ちょっと借りる、ちょっとごまかすところから、始まっています。
最初から、だますつもりのものは大型詐欺には意外と少ないのではないでしょうか。

しかし、最初の小さなだましから後戻りできなくなった事実、これが決して軽減されることがあってはならないのだと思います。

2013年4月27日土曜日

MRI事件で不思議なこと

途中から新規購入資金が解約資金に回ったという点はAIJ事件と全く同じ。

最大の違いは顧客が個人投資家だった点。
MRI日本法人は金融商品取引法上は第2種金融取引業者であり、定期的に金融庁検査を受けるし、関東財務局には事業報告を行っている。

プロ相手の金融取引業者の検査が年に5件ぐらいのペースで、一回りするのに20年かかることがAIJ事件では問題視されたばかり。その際に金融庁は、プロではなく個人投資家相手の取引業者を重点的に検査しているためとしていた。

この辺の不整合を今回はどう説明するのであろうか?

集めた資金量
診療報酬という債権を買取り回収代行するといういわゆる債権回収代行ビジネス
仕組み自体は単純
このビジネスの資金をわざわざ「日本」でしかも「円」で調達するという不自然なビジネスモデル

普通に考えても、重点検査対象先になると思うのだが。

2013年4月26日金曜日

民主党の税と社会保障一体改革を振り返る

 年金財政が厳しさを増すなか、よく聞かれるようになった言葉が、「社会保障と税の一体改革」です。なぜ「一体改革」なのか。年金改革はどうしても負担増が避けられないため、同じく負担増が避けられない社会保障全体でバランスを考える必要があるからです。
 
 このため、政府はこれまでも年金問題については単独での議論を避け、社会保障全体と税制を含めた議論としてきました。妥当な考え方ではありますが、具体化には相当なエネルギーが必要です。

 安倍政権になって動きが全く見えなくなってしまいましたが、民主党は一応目に見える形で取り組む姿勢は見せました。
 
 民主党の「社会保障と税の一体改革」をめぐる一連の動きは、2011年のはじめに当時の菅直人首相が与謝野馨氏を経済財政政策担当大臣として入閣させ、社会保障の改革を担当させたところから始まっています。2011年2月からは、その与謝野大臣を中心に「社会保障改革に関する集中検討会議」が始まりました。
 
 この会議の議長は菅首相でしたが、実際の責任は全て、議長補佐であった与謝野大臣に丸投げされていました。途中、2011年3月に東日本大震災が発生して審議が一時中断したときには、その存続も危ぶまれましたが、その後10回の議論を経て、なんとか2011年6月に「社会保障改革案」をまとめあげました。
 
 直後の7月1日に、「社会保障・税一体改革成案」は閣議報告されました。その中に盛り込まれていたのは、

・ 2010年代半ばまでの消費税率10%までの引き上げ
・ 新しい年金制度(最低保障年金・所得比例年金)の創設
・ 現行制度の改善
・ 業務運営の効率化

の基本方針です。「新しい年金制度」とは、現在3つに分かれている年金制度を一元化したうえで、一定額を保障する「最低保障年金」と所得に比例した額を受け取ることができる「所得比例年金」を合わせた制度のことを指しています。

 しかし、この成案には消費税増税の時期も示されていたため、民主党内の反発を恐れて「閣議決定」ではなく「閣議報告」とされるにとどまり、玉虫色の決着となりました。
 
 しかも、菅直人首相はこの約1か月前の6月2日に、震災の対応に「一定のめどがつけば退陣」すると明言していたため、この時点で既に菅政権は事実上死に体となっていたのです。この閣議報告は、そんな状況での置き土産となってしまい、なんとも心もとないスタートをきることになりました。これではその後の結果が腰砕けになるのもしかたないのかもしれません。この会議の中心となった与謝野大臣は、これにてお役御免となりました。

 ちなみに、この成案では企業年金については一切触れられておらず、急遽厚生年金基金の検討が開始されたのは、AIJ事件発覚した2012年2月以降でした。

 2011年9月2日に野田内閣が誕生すると、菅内閣の方針を継いだ野田新首相は、10月7日に社会保障改革推進本部を設置し、突貫工事で2011年の年末までに改革案の大枠を固めました。並行して、関連する会議もフル稼働し、成案の一部が2012年の通常国会に関係法案として提出されました。衆参ねじれ国会の中で「近いうちに衆院を解散する」という野党との口約束と引き換えに、2012年8月10日に社会保障と税の一体改革関連法案が成立しました。

 野田首相が「政治生命をかける」とまで言ったこの法案ですが、実質的な中身は、消費税率の引き上げだけと言っていいほどインパクトの薄い内容でした。インパクトが薄いだけならまだしも、消費税の引き上げがさも年金財政を改善するかのような言い回しには呆れてものも言えません。

2013年4月24日水曜日

国債がなくなる?

一番困っているのが、運用能力および貸付力の乏しい地域金融機関です。

これまでは、長期国債を買っておけば多少でも利ザヤが稼げましたが、これからはそうはいきません。

リスクをとることを求められます。

日銀の次元の異なる金融政策でマネタリーベースが2倍になります。
でも、日銀ができるのはそこまで。
景気がいい時はマネタリーベースに関係なく勝手にお金が循環しマネーストックは増えます。
逆にいくらマネタリーベースを増やしてもお金が循環しないことにはマネーストックの増加につながりません。
実際、日銀もあまりマネーストックは増えないと予測しています。
その点わりと冷静です。

じゃどうするのかというと 「期待」 ですね。
信念を持ってやれば、期待が動くというものです。

そうはいっても、少しはお金も動くはずです。
マネーストックが増加するためには、民間が借り入れを増やさなければいけないわけです。つまり誰かが借金を増やさないといけないわけです。
住宅ローン?
設備投資?
運転資金?

さてさて、一体誰が借り手になるのでしょうか?
もっともありそうなのが投資用不動産ローンでしょうか。

円安・株を維持→ 投資マインドが回復→ 不動産投資が拡大
このルートが、借入増加としては最もありそうなルートです。
設備投資にしても大企業は手元資金潤沢ですし、よほど儲かる自信があるか、金利が急上昇すると思わない限りあまり借り入れを増やさないかもしれません。でも、設備投資をすれば、そこから少しはお金が動きます。
消費税導入前の住宅駆け込み購入なんて実需もありますが量的緩和とはあまり関係ないですね。

円安の効果は輸出大企業の業績改善期待となって、とりあえずいい面が出ていますが、ぼちぼち輸入物価高も気になり始めました。
先のことは誰にもわかりません。
風が吹けば桶屋が儲かるルートがだれもきづいていないところに2つも3つもあるのかもしれません。

2013年4月20日土曜日

サタズバで年金問題

今日のサタズバで年金問題が取り上げられました。

運用利回り 4.1% 賃金上昇率 2.5%


を前提とした100年安心プラン。ムリに決まっています。アベノミクスが100年成功したとしても無理でしょう。
でも、このムリ筋はいまだに生きています。

番組で提案されたプランが

運用利回り 1.4% 賃金上昇率1%

という現実的な仮定を前提にしたうえで

2040年までに保険料を18.3%から24.5%にアップか
現在の年金支給をただちに一律21%カット

アベノミクスで浮かれている今こそ現実に向き合わなければいけないのではないでしょうか。
出演者全員がしゅんとされていたのが非常に印象的でした。

2013年4月19日金曜日

日銀の異次元の緩和は本当に正しいのか

これまでさんざん議論されましたが、私的にはいまだに不完全燃焼です。
確かに株は上がりましたし、周りの気分も少し変わりました。
以前にはなかった期待感が広がっています。

今は評価の高いクロダノミクスですが、私には黒田氏のほんとうの狙いが良くわかりません。一国民に見透かされるようでは困りものですが、崇高な目標に向かって動いていだけているか勝手に心配しています。

「目的達成のためには何でもする」という姿勢は確かにキモにはちがいありません。
しかし、インフレ2%目標はあくまでも手段であって目的ではないと信じたいです。
黒田氏が名演技を続けていると信じたいです。

でも、少し不安もあります。
それは、黒田氏を始め政治家の多くは市場の恐ろしさを知らないからであります。
最近の国債市場の乱高下も全く想定外のことだったと思います。
今のところ、ETFの買い入れも市場の下支えとしては機能しています。
しかし、このような人的な施策が予定通り最後までうまくいかないところが市場というところなのです。

私は、黒田氏がいつでも金融政策の変更を辞さない柔軟性を備えていることを切に願います。
また、インフレ2%も当面戦略上固執するとしても、めどが立ち次第いつでも戦略を変更する勇気を出して欲しいと思います。

そもそも、デフレが悪いというよりは、賃金の趨勢的な下落が悪いわけで、賃金の上昇を起こすのが政策のゴールです。それにはまずインフレを起こすしかないというのはほんとうに本当なんでしょうか。考えれば考えるほど深みにはまります。

外野でうだうだ言っているだけですが、黒田氏本人も人に言えない悩みを抱えていると信じたいです。万歳三唱で勢いづくリフレ派とは考えている次元が違うと信じたいです。

株が上がっている間は不満もないでしょうが、どうも落ち着きません。

2013年4月18日木曜日

年金問題についてアマゾンで新刊を出しました

年金問題を知ろう。シワ寄せはサラリーマンという悲しい現実 (通勤の友シリーズ)



厚生年金基金制度を廃止する方向が決まりました。

健全な基金を除いて、厚生年金基金が預かって
運用してきた国の厚生年金相当額はすべてが
国に返還されます。

不足分の大半はいつのまにか減額返済という形で
巧妙に厚生年金にまぶされることになりました。
結局つけを厚生年金本体に回すという
いつものどんぶり処理です。

このように、問題があるたびに厚生官僚は
「物言わぬサラリーマン」を食い物にしてきました。

これでいよいよ問題は本丸の厚生年金本体へと移りました。

これまでサラリーマンの厚生年金がいかに食い物にされてきたか
知らないことには何も始まりません。


■対象とする読者
すべてのサラリーマン


■文字数
約3万字
読了想定時間 約1時間

2013年4月15日月曜日

営業特金と厚生年金基金

黒田緩和でバブルが来るのか来ないのか。
いい意味でも悪い意味でも、国民の関心は高まります。
ここにきて、タンス預金を株に移す人も増え始めているようです。
いくら日銀が銀行から国債を買い上げてもそれだけではバブルにはなりません。
バブル生成の2大要素をガルブレイスは「バブルの物語」でこう指摘しています。

①時代が収益及び価値が大幅に増大するような新局面に突入し、それが持続するとみんなが信じる
②投機のムードを察知する保守的な人たちも、投機が終わる前に手を引くことができると確信して上昇機運に便乗する

確かに①のムードは形成されつつあります。8割近い国民が支持をしています。ただ、実際に景気が良くなると思っている人はまだ過半数に達していないようでありますが。

80年代後半のバブルのけん引役はにわか仕立ての機関投資家と営業特金およびファントラです。何と言っても大手4社の営業特金の存在は非常に大きかったと思います。89年末には営業特金・ファントラの残高は43兆円まで増えていました。株が89年末に高値を付けたのも、年末に営業特金の廃止が決まったということが最大の理由でしょう。

今回は、この営業特金にあたるものはありません。機関投資家も分散投資が中心で、大して株のウエートを上げるとも考えられません。この辺の違いは頭に入れておく必要がありそうです。営業特金の原資も多くは金融機関からの借り入れによるものでした。製造業が「モノづくり」ではなく「金づくりに走ったわけです。「財テク」という言葉がもてはやされました。財テクをやらない企業の経営者は超保守的とまでみなされました。

しかし、そう考えると厚生年金基金の代行制度はちっとも不自然ではなかったのもうなずけます。厚生年金基金は、国が運用するはずの年金資産の一部を借りて、基金が持っている資産と合わせて運用する仕組みです。企業年金自身が持っている資金と厚生年金本体から借りている資金の比率はだいたい基金全体で2:8です。ということは、厚生年金基金は、もともと持っている資金の約5倍ものお金を運用しているということになります。

企業が銀行から融資をうけて財テクに走ったのはバブル期の話ですが、驚くことに厚生年金基金はいまだに、国からお金を借りて財テクを続けていたのです。

営業特金は多くの膿をだして90年初頭に清算されましたが、厚生年金基金はその後も生きながらえ、ようやく今回廃止が決まると思いきや、条件付きで存続が認められたわけです。

2013年4月10日水曜日

先送りの思考

 厚生年金の問題とAIJ事件を見ていると、自分が正しいと思い込んでしまうと、それを否定するような意見を受け入れるのは非常に難しいのだということに、改めて気づかされます。
 
 傍から見ると理解しがたいことですが、浅川被告は大真面目だったと思います。大真面目なだけに彼の主張はぶれません。しかし、客観的には、滑稽な姿にしか見えません。相変わらず、自分中心の考え方は改めることはできず、もう一度投資運用業をやりたいと漏らしているようです。あり得ない話ですが、彼には自分の姿がいまだに見えてないのでしょう。

 
 巨額の年金を消失させたAIJ浅川被告は、事件発覚後も運用利回りを水増し(粉飾)したことは認めても、決して騙したのではないとの主張を続けました。衆院の証人喚問でも繰り返された、「騙すつもりはない、良かれと思ってやった」の言葉。

 
 私は、おそらく彼の本心だろうと思っています。浅川被告の目標は、彼の言うように顧客を騙すことではなく、あくまでも厚生年金基金のために安定した運用利回りを提供することだったと思います。そのために、途中で運用がうまくいかなくても、「挽回できると信じた」架空の利回りを顧客に対して示し、営業を続けました。

 
 損失も取り返せると信じ、粉飾を続けた浅川被告と同じように、厚生官僚と御用学者は、国民のために「一生懸命」考え、「良かれと思って」粉飾を繰り返し、問題を「先送り」にしているのです。

 
 こうした先送り思考は何も彼らに限ったことではありません。日本全体に蔓延する国民病みたいなものです。悪いことに、やっている本人が大真面目な場合、問題は複雑さを増し、時間が経つに従って事態はとんでもないところまで行ってしまいます。

2013年4月5日金曜日

意表をついた金融政策

かなりインパクトのある内容でした。
市場の読みを大幅に上回り、現時点でできることをすべて盛り込んだというのは、さすがでした。

普通、全部出したらまずいのじゃないかと思いますが、その辺がこれまでと違うという印象付けに成功したということです。

全部出したとしても、現実には緩和を続けるわけですから、下支え効果は続きます。特に為替と株の強力なサポートになりますし、息切れしたらまたなにかやりかねないと思わせることで、連鎖的な売込みにはつながりにくいはずです。市場との駆け引きには成功したといえるでしょう。

ピッチャーが完封宣言したわけですから、いよいよ次は打線の番です。ホームランでなくても、一人ずつ塁に出て、確実に点を取っていきたいものです。

2013年4月3日水曜日

AIJ事件と厚生年金

「とりあえず、厚生年金なら手厚いし、安心」。年金の問題がたびたび騒がれる昨今でも、こう思っている人は結構多いのではないかと思います。「未納」の問題がしばしば持ち上げられる国民年金と違い、厚生年金は確実というイメージが根強いようです。厚生年金の保険料は給料から天引きされるものでもありますし、払っているという実感があまりない方もいるかもしれません。どうせ払うかどうかは選べないし、将来戻ってくるならいいや、と思っている人もいるでしょう。

 あまり話題にされることすらない厚生年金ですから、その財政状況について知っている人など一握りでしょう。実は、この厚生年金は、国民の大多数が知らないうちに、すでに待ったなしの状態に陥っているのです。「待ったなし」というのは、一刻でも早く何らかの手立てを講じなければ、制度が維持できなくなる状態にあるということです。年金や経済の専門家などのなかにはこの状況に危機感を持ち、著書などを通じて問題を訴え続けている人もいますし、もちろん官僚や政治家も、事態の深刻さは重々ご存知のはずです。しかし、大きな事件でも起きて、国民が騒ぎだすことでもない限りは官僚や政治家が、わざわざ「触らぬ神」を国民の前に引っ張り出すことはないでしょう。大きな事件とは、例えば厚生年金基金の廃止を決定付けた、AIJ事件級の出来事です。

 AIJ投資顧問による「年金消失事件」は、新聞やテレビで大きく取り上げられました。普段、経済にはあまり関心がないという人もニュースなどで目にしたのではないかと思います。AIJ投資顧問の浅川被告は、顧客から預かった資金の運用に失敗して巨額の損失を出していたのにもかかわらず、運用がうまくいっているように運用成績を粉飾して、約10年間営業を続けました。粉飾された数字を信じてAIJと契約を結ぶ顧客は増え続け、損失額は膨らみました。金融庁の調査が入り、損失が明るみに出たころには、顧客から預かった、1500億円もの資産が、消えてなくなっていたのです。

 AIJ事件の実態は、結局、浅川被告が基準価格(純資産価値)を粉飾して営業を続けたというだけで、背景に複雑な背景やカラクリはなかったようです。むしろ、AIJ事件を増幅させた外部要因こそ白日の下にさらすべき、「深き闇」であったのです。その最たるものが厚生年金基金制度の制度疲労でした。

 AIJ事件を受けて、厚生労働省は問題のあった厚生年金基金制度を廃止する方向で動き始めました。厚生労働省にとって、AIJ事件は欠陥のある制度を放置した自身の責任を曖昧にする絶好のチャンスに映ったようです。この厚生年金基金制度には長い間に蓄積された、さまざまな根深い問題があったのにも関わらず、厚生労働省はこれまでまったく抜本的な対策を講じることができていなかったからです。

 厚生年金基金制度の廃止をめぐってはようやく結論が見えてきました。結局、厚生年金本体にまぶしてしまうというどんぶり処理です。いよいよ問題は本丸の厚生年金本体へと移ったことになります。

 これまでも、厚生年金を含む公的年金に関する問題はマスコミでも散々騒がれてきました。年金にまつわる問題というと、いろいろな報道が思い出されますが、とりわけ大きな問題を抱えていたのは、年金特別会計という伏魔殿を通じた利権の構造でした。年金官僚は複雑な制度を意のままに操ることで、事務費の流用や巨大保養施設の建設などの壮大な無駄遣いをおこない、それを長年にわたり繰り返してきました。また、その不透明な資金の流れの中に官僚OBの指定席をいくつも作り出してきました。

 ただ、これらの問題は、ハコモノという外形を伴うだけにわりと国民にも分かりやすく、マスコミで大きく報道されるたびに、官僚たちにも少しはやましさがあるのかそれを認め、問題は少しずつ解決されてきました。一方、私が問題だと思っているのは、そのような年金行政の問題ではなく、国民には問題の実態がつかめず、官僚にはやましさがないが故に一向に出口の見えない、制度の闇というべき問題なのです。

 「騙すつもりはなかった」「一所懸命走り続けた」「取り戻せると思っていた」

 顧客から預かった1500億円もの年金を消失させた浅川は、事件発覚後の衆院証人喚問でも繰り返しこのように述べました。彼自身は、悪意はなく、一時的な損失も必ず取り返せると信じてやっていたといいます。

 そんな浅川を世間はあざ笑いました。「何馬鹿なこと言ってんだ」「結果はどうなったって言うんだ」「噓こいてんじゃないよ。よくもしゃあしゃあとそんなこと言えるな」かたや大真面目、もう一方は「それを詐欺というんだよ」で議論は永遠に嚙み合いません。

 しかし、このあまりにも滑稽な光景はそっくりそのまま厚生年金の問題にも当てはまります。およそ信じがたいことに、現状もここに至るまでの経緯もAIJ事件と瓜二つなのです。

 厚生年金は粉飾されています。それは残高という意味ではなく将来の支給見通しに対してという意味です。厄介なことにそれを操る官僚たちに悪意は微塵もありません。だからこそ深刻なのです。損失も取り返せると信じ、粉飾を続けた浅川と同じように、高級官僚と御用学者は、国民のために「一生懸命」考え、「良かれと思って」粉飾を繰り返し、問題を「先送り」にし、いつか事態が好転し「取り返せる」ことを信じ祈っているのです。

 政治家は官僚・御用学者のやり方を疑いはしても、手間暇かかる改革に踏み出すよりは、官僚の書いたシナリオに乗っかっておくほうが無難だと思っています。彼らにとって大事なのは、国民の将来ではなく、政治家としての今なのです。浅川は逮捕起訴されるまで毀損した資産の問題から逃れることはできませんでしたが、官僚や政治家は問題を先送りにし、やり過ごせば、責任は問われません。

 このままでは厚生年金にAIJ事件どころではない事態が起こるのは目に見えています。何十年間も保険料を払い続け、老後の生活を年金に託す多くの国民は、年金資産の不透明な運用を続ける官僚やそれを黙認する政治家をなぜ追及しないのでしょうか。国民は彼らに下駄を預けたままでいいのでしょうか。

 悔しいことに、国民自らが年金の実態を知ろうとしても、簡単ではありません。書店や図書館の年金コーナーには「年金解説書」がズラリと並んでいますが、ほとんどは、現行の制度の中で、どうしたら年金で損をしないで済むかという観点で書かれたものばかりです。著者は、厚生労働省や社会保険庁のOB、現役社会保険労務士などの体制側であるため、内容も厚労省の説明を100%鵜呑みしたものになっています。得する年金術というミクロな視点も結構ですが、それよりも大切なのは根っこにある問題を正しく理解することでしょう。

 一部の良識ある学者は、厚生年金の粉飾や実質的な破綻を指摘していますが、その声は国民には届いていません。

「年金村」はガッチリと御用学者にガードされていて、少しでも盾突こうものならマークされて干されてしまうという事情もあり、学者はどうしても腰が引けざるを得ないのです。もうひとつの理由は、学者のレベルからは平易に書かれていても一般の人にはそれでも難しすぎるのです。そんなわけですから、書店でもせっかくの良書も目立たないところにひっそりと置かれています。

 こうした状況のなかで恐るべき公的年金の実態を国民が知るのは、いつまで経っても大変難しいのです。

 問題の根っこに、ハードランディングを避け、問題を先送りすることを許容する日本国民共通の遺伝子があります。この遺伝子は、粉飾ウイルスに耐性がありません。AIJ事件は、これから明らかになる年金問題のほんの序章に過ぎず、粉飾ウイルスはさらに猛威を振るうでしょう。

 今必要なのは、国民が厚生年金の実態を知り、先送りせずに問題と向き合って解決に向けて踏み出すことです。その一歩は年金問題の解決だけでなく、国民主権の回復、ひいては、長引くデフレからの脱却にもつながるのです。

2013年4月2日火曜日

厚生年金基金制度改革法案

厚生労働省の厚生年金基金改革法案の概要が公表されました。
自民党に最大限配慮したうえで、実質廃止の方向はなんとか貫いたようにも見えます。

厚生労働省としては一気に廃止して、この基金制度の不始末にケリをつけたいというところではないでしょうか。

少し気になる点があります。またまた、代行返上に必要な金額の計算が見直されます。これまで、後追いでなし崩し的に引き下げられてきましたが、今回はかなり突っ込みます。2012年3月時点で1兆1000億円あった不足額が約6000円億円に減ります。

5000億円の減額は計算方法を替えるだけなので、厚生年金全体で負担することには変わりはありません。

そもそも厚生年金自体が、将来の年金支給に必要な資産を持っていないとから、厚生年金基金が返さなくてはいけない金額は厚生官僚のさじ加減でどうにでもなる数字なのです。少なければ少ないほど本体にしわ寄せが行くだけです。

問題が厚生年金基金から厚生年金に移されたに過ぎないことを忘れてはいけません。

2013年3月29日金曜日

雇用流動化

解雇規制の緩和や雇用の流動化をどう進めればいいのか、非常に繊細な問題です。
向かっている方向はなんとなくわかっていても、なかなか思いきった提言や改革ができないのが悩ましいところです。

中高年の給与水準が、相対的に高止まりしていることが、この問題の大元だとも考えられます。しかし、中高年からすれば、若いころに賃金を低く抑えてきた分を後付でもらうというルールを信じてきたわけで、いきなりルールを変えるといわれても、そんなことは聞いていないといことになります。でも、この仕組みはいつまでも、もたないだろうということもうすうすとは感じています。

20代30代は、すでに賃金の二極化への心構えはできています。単純な仕事を選べば、賃金の伸びはあまりなくとも雇用を確保できる可能性は高まります。高度な専門職は賃金が急激に伸びていきますが、いつどこで転落するかはわかりません。30年間このままあいまいにしておけば、いずれなるようになるのでしょうが、ゆがみはなんとか少しでも前倒しで解消したいものです。たぶんこれもアベノミクス4本の矢になるべき類のものだと思います。

対策のひとつが、「現金による解決」だと思いますが、昨日首相が否定したことでこの問題も袋小路入りしそうな雰囲気です。

私自身も現在仕事を探していますが、中高年の雇用市場はほとんどありません。新卒の就職難ははみんな知っていますが、中高年の再就職問題は水面下に潜っています。ハローワークで何十回紹介されても面接にすら呼ばれません。

思いっきり水準を下げたとしても、現行の中高年の賃金体系の壁がある限り、安くても働きたい労働者を雇用市場から迎え入れるのは非常に難しいのです。過去の肩書が逆効果に作用する場合もあります。扱いにくくてもいやだし、組織にまた新たなゆがみを生むことを保守的な企業は好みません。

安い賃金でもいいから働きたい人と、高いけどしょうがないから古い従業員を残す企業とのギャップが埋まっていくのは、このままだとおそらく10年単位の時間がかかるのでしょう。

「現金による解決」によって現在の職場を離れたとしてもも、もしそこに「中高年の労働市場」が存在すれば、物事は動き始めるはずです。

もう少し知恵を絞りたいところです。

2013年3月28日木曜日

厚生年金基金存続について

厚生労働省は廃止を検討していた厚生年金基金制度について、財政が健全な一部の基金に関しては存続を認める方針を固めたようです。健全な基金の存続を求める自民党の意向を踏まえ、民主党政権時代に打ち出した制度廃止方針を見直し4月に関連法案を国会に提出するそうです。 

この「健全な基金」という意味が非常にあいまいです。
これまで、後追いのつぎたしつぎたしで、代行返上のルールを何度もゆるくしています。どの基準でもって健全とみなすかはよくわかりません。
過去の実績に加え、今後の運用方針、運用体制、いろいろと考えるべき点は多そうです。

ここのところの相場上昇で、一息ついている基金は多いと思います。やらせろという基金側の意見に抗しきれなくなったものだと思います。自民党の歯切れの悪さが復活しているようで気になります。国民の関心が薄いスキにということでなければいいのですが。

基金=代行制度ですから、基金を維持するということは国よりうまく運用する自信があるということです。本来の企業年金部分に比べ約5倍程度の資金を預かり国と運用競争をするわけです。いわゆる5倍のレバレッジがかるわけです。国の運用がへぼだからという考えがあるかもしれませんが運用に絶対はありません。企業年金本来部分にも影響がおよびかねない危険な仕組みをどうしてそこまで死守したいのでしょうか。本当にそれが従業員福祉のためになるのでしょうか。

存続する基金には厳しく今後一切変更のきかない厳しいい返上ルールを適用して、存続させたのちに返上する場合は厚生年金本体への負担が一切かからないようにするというのが筋だと思います。この辺の議論は要注目です。






2013年3月27日水曜日

民間にはメスところで公務員は

いよいよ、定年延長が動き出しました。
年金支給開始時期とのギャップを埋めるためには、多少いびつでも進めるしかないのでしょう。いずれにせよ大幅な賃金カットは避けられません。それでも同じ職場にのこれるだけでもマシだと考える人は多いのでしょう。

いろいろとヒヅミが多いこれまでの制度仕組みの中で、いよいよ民間雇用のタブーにメスが入ることになります。これまでは、派遣社員ばかりが狙われてきましたが、いよいよ正社員の番です。

これまでの護送船団方式は年功序列で、多くの管理職を作り出してきました。右肩上がりの時は給料の後払いでうまくいきましたが、とっくに破綻しています。そのヒヅミの一つが数百万人いるといわれる社内失業者でしょう。これまでは、なんとか社内で抱えてきた人員も解雇規制の緩和とともに市場に放出されることになるのでしょう。

また、これまでの60才という節目は意味をなさなくなるでしょうから、前倒しで中高年の賃金カットが進まざるを得ないでしょう。いよいよ「約束が違う」とは言ってられなくなってきました。

この辺に対する不安が、デフレの大きな原因だったともいえるのではないでしょうか。
デフレの被害を最も受けなかったのがお年寄りと公務員と政治家です。
公務員制度改革は一向に進みませんし、国会議員の定数削減も牛歩です。
官僚は民間の動きとは裏腹に、相変わらず天下りを続けています。
天下りできないのであれば省内で受け皿が必要だという議論はいつまで続くのでしょうか。

民間は中高年の社内失業者がまさに雇用市場に放出されようとしています。中高年の再就職市場は今でもお寒い限りですが、一段と厳しくなるのでしょう。

こんなときでも、母屋でスキヤキを食べている場合でしょうか。








2013年3月25日月曜日

次元の違う金融政策の正体

黒田新総裁の会見は表情豊かです。
市場に語りかける姿勢を感じさせます。

その一方で、とことんやる、何でもやるとしている金融政策の具体的な内容は相変わらず見えていません。

次元の違う金融政策とは、ズバリ「期待に働きかける」ということです。
デフレの原因を単なる貨幣現象ととらえている経済学者とは少し違うようです。

デフレは、やはりさまざまな経済の複雑な要因が絡み合ったもので、単なる物と貨幣の交換比率の問題ではないと考えているからこそ、期待に働きかけることが重要なわけです。

つまり、次元の違う金融政策とは、「口先を最大限に使った景気刺激策」ということになります。貨幣の量を増やす、物価を上昇させる、何でもやるというのは、すべて演技で、実はどうでもいいのです。景気を刺激することこそが目的ということになります。

この舞台裏は、なるべく気づかれないほど効果があるわけです。具体的な中身は出してはいけないということです。

2013年3月24日日曜日

本当の目標

物価上昇率2%というのは本当に目標なのだろうか。

目標とみせかけた高度な手段ではないだろうか。
そう考えたほうが合理的だ。

金融緩和によって物価が上昇するルートは依然として極めてあいまいだ。

しいて言えば、期待に働きかけるということなのだが、
そういう意味では、相当これまでうまくいっている。

すでに4か月も時間を稼げた。この調子で時間をかせげれば、アベノミクスの1本目の矢としての役割は十分果たしたといえるのではなかろうか。
物価なんか本当は上がらないほうがいいに決まっている。
ほっておいても消費税が3%上がるのだ。

とにかく、何でもやる、2%は必ず達成する、こういい続けることが実はこの政策の最大のポイントなのだ。でも、本音はムリだとわかっている。

だとすると、目標の2%を取り上げてあんまり政府や日銀を追いこんではいけないということになる。みんなで有効だと信じるフリを続けなければいけないということだ。

こういうことを指して、白川総裁は、「言葉による金融政策は危うい」と一言残して、日銀を去って行ったのではないだろうか。

深い、実に深い駆け引きである。

2013年3月22日金曜日

期待が先行


期待に働きかけるというのが、今回の金融政策のミソだとすれば、期待が先行した現在の状況は非常にやりにくい。その辺の感覚は学者にはわかりにくいと思う。

ここにきて、慎重な言い回しがちょろちょろ出始めていることからもその辺の空気が感じられる。

そんな中で、麻生財務大臣の「いかにも学者さんらしい...」発言は結構的を得ている。やはり皮膚感覚があるのだろうか。
これからは期待の期待をコントロールするという非常に高度な段階に入ったのではないだろうか。

無制限にといいながら、本当は無制限にはやりたくないのが本音だろうから、その皮が意外に早く剥げてしまう可能性もあるだろう。そのことを指して白川元総裁は言葉による金融政策は危ないとしていたのだろう。

2%のインフレ目標というのが気になる。だめなら辞任なんて気楽なもんだ。帰るところのある学者はいい身分だ。
何が何でもやるということになれば、日銀を追いこんでしまうことになる。それこそ簡単に閾値を超えてしまうこともある。

早いこと期待が効いている間に、第二第三の矢をしっかりと打ってほしい。
そして、第一の矢がうやむやになってくれるのが一番いい。

2013年3月20日水曜日

利害相反する各世代に共通する経済スローガンとは何か

全体のパイがなかなか増えない経済においては、何かをやればほかの何かをあきらめざるをえない。

80年代までは、経済成長は続いていたし、国民の向いている方向は「今日より明日が良くなる」で一致していたから、だいたい何をやるにも大きな関門は少なかった。
うまくいく頃に作った仕組みを引きずりながら、ここまで来てしまったのが、今日のいろんな閉塞感を生む大元になっている。

政治が結果責任というのならそれは自民党の責任だ。

今日の二つの大きな問題は、経済全体のパイがなかなか大きくならないということと国民が世代によって全く番う方向を向いているということである。

最初の問題には自民党政権が新たな気持ちで頑張っている。しかし、2番目の問題はなかなか厄介だ。これを調整するのが政治の役目のはずだ。時間と苦労が大きくかつ地味ときている。しかも、扱い方によっては政治生命を脅かしかねない危険性を持つ。本音ではできれば手を付けたくはないと見える。

60代以上は全体を見れば金持ちだが、ミクロでみるとスーパーリッチとぎりぎりの年金でインフレ、消費税増税の足音におびえる人たちに2極化している。前者は多少の負担はやむを得ずと思っていても、後者はただひたすら現状維持を願うだろう。

50代は年金を期待してはいけないと思いながらも、ある程度の期待はしているという非常に矛盾に満ちた人たちである。年金支給開始までの間をどうつなぐかが目下最大の関心事である。この世代も、改革を口にするものの、本音はなんとか現状維持であろう。

40代は目先の教育費用と住宅ローンの支払いのことで頭がいっぱい。ヘタするといつ肩をたたかれるかもわからない。自分のことで精いっぱいで、政治を考える余裕はあまりない。アベノミクスにお任せするしかない。

20-30代はバブルを知らないし、不可確実性への心構えはきちんとできている。最初から覚めている。年金には期待できないと思っており、自動的に天引きされる年金積立には不満も感じている。多くが政治に不満を感じているものの、どうせ何も変わらないと思うので積極的に関与しない。

これらの人たちを束ねて国のかじ取りをしなければならないわけだから、本当に政治家は大変だ。これらに対する答えの最小公倍数が「高度経済成長を取り戻す」ということになる。個別にゼロサムゲームをやっていては収拾がつかないということがなんとも悩ましい。しかし、与党野党問わず政治家には、ぜひこの2つ目の難題も忘れずに手を付けてほしい。

2013年3月16日土曜日

模索が続く電子書籍

個人的に注目していた 「個人出版ゲリラのための戦う電子書籍メルマガ
週刊だったが、読者が思うように伸びず10号で廃刊が決まった。
この業界の動きは早い。

個人の電子出版を応援するために、日本一アマゾンキンドルストアに詳しいとされる32歳無職の男を編集長に抜擢して大手ブログが始めたもの。

ブログの方は無料なので、昨年末に立ち上げたにも関わらず、すでに月間10万ビューレベルに到達してる。電子出版でヒトヤマ当てたい小説家の卵たちが頻繁にチェックしているのだろう。

ところが、ブログを発展させた電子書籍は皮肉なことに全然売れない。
おそらく、電子書籍を買う余裕もない人たちが読者であるという大きなギャップが存在するのだろう。

今誰でも、電子書籍は出せる。しかし、それを世の中のお金を払ってくれる人たちに届けるのは至難の業だ。

2013年3月15日金曜日

景気の気はまず気から

ちょっと前まで、どんよりしたムードだったのに、政権が変って「本気でやります」とぶちあげただけで世の中が動き始めた。

アメリカ住宅市場に底打ち感が出ていたこと、これまでのドル安効果でグローバル企業が好調さを保っていたこと、NYダウが上昇波動に入ったこと、欧州危機がしばらく沈静化していることらが重なったことも大きい。

また、民主党がふがいなかった分の反動による期待感が高まったこともある。期待に働けるといっているが、まさにそれを地で行く展開だ。

国民の多くは、大胆な金融緩和=緩やかなインフレ=デフレ脱却の公式が頭にしみついている。

でも、そんな時だからと楽観論にくぎを刺す論者もいるが、楽観論の前では劣勢で結構矢面に立たされている。

論者・弁者を名乗るからにはここでどちらかのスタンスを出しておかなければ、埋没してしまう。
ここは、絶好の露出チャンスなのでここぞとばかりに緊急出版が続く。極論を言って当たればラッキーだが、はずれても十分余りある知名度が残る。緊急出版の裏にはそんな本音がのぞく。絶対的な正解がない経済学というのはこういうときにありがたい。

2013年3月13日水曜日

金融政策論戦の先

新しい日銀に求められることは、中央銀行としてできる限りのことをするということだろう。その場合、通貨の信認を守るという絶対的な使命があることは当然過ぎて言うまでもない。その中で、知恵をだし、汗をかき、市場との間で蝶々の駆け引きをやれということ。要はFRBのバーナンキやECBのドラギに負けるなということである。

日本はようやくリーマンショック前を回復したというのに、NYダウは早々と史上最高値を更新した。欧州にしても南欧諸国の問題を抱えながらも、一時期の危機感は大きく後退し最高値を虎視眈々とうかがっている。それに比べ日銀はいったい何をやっているのだという思いが極まっていたのがリフレ派だろう。それに対し、反リフレ派は金融政策万能論のような浮足立った風潮が広がることが気に入らないようだ。

しかし、日銀が中央銀行としての独立性を守り、独自のやり方でいままで以上にできることは何でもやるということであるならば、あんまり目くじらを立てるほどのものでもないはずである。結局、非伝統的金融政策、無制限の金融緩和、前例のない金融緩和といろいろいうけれど、やろうとしていることは、買い入れ対象資産を増やして日銀のバランスシートをさらに膨らませるということにほかならない。それが通貨の信認を守るという範囲でどこまでが適正なのかが前もってわからないということが悩ましい問題なのである。それに答えがないから、反リフレ派は必要以上に神経をとがらせる。ましてや、物価上昇を目標にすることが、際限のないバランスシート拡大につながるのではないかと懸念する。ある閾値を超えるとインフレがコントロールできなくなると主張する。現実にはこれまでも買い入れを増やしてきたわけであり、これまではよかったが、これからはいけないというわけでもなかろう。ただ、その限界がどこにあるのかがわからないから怖いのである。

しかし一方で、その限界に最初から言及してしまうと出る効果も半減してしまうというのが良識的なリフレ派の考えなのだろう。その辺の阿吽の呼吸が通じ合っているのであれば、あんまり金融政策論議を周りでああだこうだいうことは杞憂なのかもしれない。しばらく休戦してみてはどうか。

ところで、NYダウの史上最高値更新は何を意味するのであろうか。FRBの大胆な金融緩和で援護射撃をする間に、アメリカの持つ潜在力が動き始めた結果といえそうだ。好調な企業業績に支えられていることは間違いないが、雇用情勢や末端経済との間に存在するギャップは少し気になる。

果たして日本のもつ潜在力は何か。伸ばすべきものは何か。成長戦略・TPP参加というのが叫ばれているが、人口減という大きなハンディキャップを十分に補ったうえで潜在力に働きかけることができるのであろうか。日本最強論者たちが口をそろえて世界一だと強調する、日本国債を十分吸収できるほど潤沢にある民間貯蓄とこれまでに貯めてきた対外純資産、この二つをもう少し具体的に活用する方法が今こそ必要なのではなかろうか。特に高齢者にかたよっている金融資産をどう生かすかが大きなカギを握っているのではなかろうか。これこそ大いに議論したい。

2013年3月11日月曜日

仕方なく虚偽を認めた。失敗は成功のもと。

1週間ほど前に出たビジネスジャーナルの記事。

特に目新しい話はなく、ここの所、マスコミの取材に応じていた社長の記事をまとめたもの。
再起を目指しているというのも伝聞情報だろうが、その通りではないかと推測する。

社長の思考経路・事件発覚後の行動から考えて、そう考える可能性は極めて高いだろう。

もしそうだとすれば、相変わらず自分中心にしか世の中が見えてないようである。

2013年3月10日日曜日

粉飾の心理

別ブログに1995年のベアリング事件のことを書いた。
一トレーダーの巨額損失でイギリスの名門ベアリングがとんだ事件だ。

この事件もそうだが、粉飾の入り口はどんな大きな事件でもほんの些細な出来事から始まっている。最初から悪意があったケースというのは少ないかもしれない。

大和銀行事件もそうだったし、住友商事の銅相場による巨額損失もそうだった。

ごまかしを許すゆるい監視体制
ほんの少しの出来心
ごまかしを続けて虚栄を張り続ける自尊心
最後は感覚がマヒしてとんでもない相場を張ることになってしまう。

大抵こんな流れだ。

そして、共通するのが、取り戻そうとする心理が判断をことごとく狂わせる。
相場の神様が、嘲笑っている。
そんな甘いもんじゃおませんで-と。

しかし、誰しも些細なごまかしの誘惑にはいつもさらされている。
「ずる」の著者ダンアリエリによると、人は道義的に許容される範囲内でちいさなごまかしを繰り返すらしい。ごまかしから利益を得る欲求と自分は道徳的で素晴らしい人間であるという境界線ぎりぎりのバランスを取っているという。

おっしゃるとおりかもしれない。
人の定期をちょいと借りようという行為は典型な試金石かもしれない。

ごまかし行為の一線を越えさせないために規制や罰則という抑止力も必要だが、人間の内面にある道徳心に訴える原始的な方法も意外と有効だとダンは主張している。



2013年3月9日土曜日

新しいブログを開設

運用・投資について別ブログを立ち上げました。

相場観と金融工学


このブログは、これまで通り政治・経済・社会問題全般を広くカバーします。

2013年3月8日金曜日

日経平均リーマン前水準回復

日経平均がようやくリーマン前の水準を回復した。

100年に1度とも言われた危機を起こした張本人であるアメリカ。日本をしり目にNYダウは史上最高値を更新した。

日米で、何が同じで何が違うのだろうか。

まずアメリカはリーマンショック後、長きにわたりQEと呼ばれる金融緩和を続けてきた。バーナンキは議会証言や定例会見において、独特の間合いを取りながら市場と慎重に対話を続けてきた。この点は手首の固かった日銀とは大きく違うだろう。
また、金融緩和を受けて進んだドル安は、オバマ大統領の掲げる輸出倍増計画との親和性が高かった。通貨安で大手輸出企業の業績改善を狙う点は日米ともに同じだ。

しかし、何と言っても大きい違いは、危機の発火点であった住宅市場の底打ち傾向であろう。アメリカは毎年200万人以上の人口増加という強い味方がいる。住宅に対する潜在需要は常に存在している。住宅価格は2000年以前からのインフレ調整したトレンドにすでに戻っている。

アメリカは企業業績は好調だが、雇用の回復は依然緩慢だ。本日発表の雇用統計においても改善傾向は示されるであろうが劇的なものではなかろう。

企業業績の好調さとは裏腹に、企業の雇用に対する慎重姿勢はまだ大きく変化していないのだろう。グローバルな競争が激化する中で、コスト競争力を維持するために労働者にはぎりぎりの負担が求められる構造は日米同じ。消費につながる雇用の改善や給与増が何と言っても大きなカギだ。

さて、ここ数日の日本の株価上昇はアベノミクス効果というよりはアメリカに牽引されたと考えたほうがいいだろう。円安も独自要因というよりはドル高効果が強い。

アメリカにだいぶ下駄をはかせてもらったので、必要な改革にも手を広げるチャンスが広がったのではなかろうか。



松井証券社長の意気込み

年明け早々にデイトレ信用取引手数料ゼロ宣言をした松井道夫社長。

これまでも、数々の語録を残してきた。
人事は好き嫌いでやれだとか。
ある意味一見意表を突きながら本質をとらえるのが得意な方だ。

横並びの固定手数料に守られた証券界に殴り込みをかけた男でもある。

その発想と行動力はまことにユニークである。

その松井証券が、これまで取り囲みの対象にしていたデイトレーダー向けの手数料をただにしたのである。
まさに、究極の焦土作戦。

社長によると、意味のない手数料引き下げ競争に終止符を打ち、この消耗戦を早期に収束させるとともに、それ以外の収益基盤の獲得に軸足を移すとということのようだ。

しかし、昨年末から始まった株式市場の活況は続いている。
ビジネスモデルが定まらず苦しんでいた証券業界が、久方ぶりに息を吹き返している。
評価損を抱えて身動き取れなかった個人投資家がやれやれと言っているように。

奇襲に出た松井証券の作戦はいまのところは、功を奏してないようにも見える。
最近のコメントが見つからないが、またまた次なる作戦を考えているのだろうか。

個人的に非常に興味がある。



2013年3月7日木曜日

電子書籍に動きあり

角川書店が100円でミニッツという電子書籍を本格展開するらしい。販売上手な幻冬舎も分割配信という形で低価格を実現するようだ。

電子書籍を出版社から1冊、自身で3冊出していることもあり、これからの動向については気になっていた。

大手出版社はいかに紙ベースの出版とすみ分けるかというのが大きな戦略課題だろう。今回の2社の取り組みはその第一歩だといえる。大手の一角が動き出したことで、ますます業界の動きからは目が離せなくなってきた。同時に、アップルも書籍配信に本格参入している。

アマゾン、アップル、楽天の3社が電子書籍プラットフォームという土俵で対決する。こちらも見ものだ。いまのところ、アマゾンがワンクリック購入・自動同期で先行している。しかし、アマゾンはキンドル端末を普及させるため、最初に電子書籍購入をパソコンから行わなければならないというムリ筋を行っている。しかも、そのパソコンからは購入した電子書籍は見れないという致命的な弱点がある。

スマートフォンユーザーは一旦パソコン経由で同期しなければならないということ。さらに、無料のキンドルアプリを使うということも知らない人が多い。そこをアップルがどうついてくるのか。また、楽天の巻き返しはあるのか。目がはなせない。

一方、出版社にとっての大きな問題は、電子書籍を配信するプラットフォームをどうするかということに加え、価格と分量をどうするか?である。

これまでの紙ベースの世界では、ページ数でだいたい決まっていたようだが、これからはそうもいかない。電子書籍ならではの速報性・追加改訂という機動力もあらたな変数だ。また、内容の陳腐化に伴い価格を下げるということや、絶版になったものも復活させ、品ぞろえで勝負ということもできるだろう。まさに「ロングテール」である。アマゾンキンドルストアではこうしたやや売り上げの落ちた書籍を電子化して、価格と売り上げの実験が行われている。価格とランキングをたまに眺めるだけで、いろいろなことが見えてくる。

また、誰でも電子出版を行えることになったので、ここでも新しい展開が起こるだろう。アマゾンキンドルストアでは、有象無象の新人?一夜作家がひしめきあっている。当然、その品質はピンからキリまである。

このピンキリの中から、個人作家はなんとか抜け出す方法を考え、出版社はこの個人作家の群れをなんとか活用できないかと考える。また、個人出版と出版社の違い、付加価値というものも見えてくる。

ニートといわれる人たちに、これまでのブログアフィリエイト・FXに加え電子書籍という新たな希望が加わった。

これから、いろいろと舞台の裏表で悲喜こもごもの面白い動きが起きそうなので、執筆家のひとりとしてこの動きを追っていきたいと思う。

2013年3月6日水曜日

期待に働きかける政策

日銀は黒田新体制のもと、量的金融緩和によって期待に働きかけ、デフレ脱却を目指す。

リフレとは意図的にミニバブルを起こそうということにほかならず、それだけを目的にするなら主導者は昔のバブル紳士のように大雑把で大胆なほうががいいのかもしれない。

白川総裁につとまらなかったのは無理もなかろう。黒田総裁ならきっとその任に堪えると政府は判断したのだろう。

ところで期待という言葉を聞くとQレシオというのを思い出す。

バブルの最終局面、ファンダメンタルで評価するのが難しくなった株価を理屈づけするためにあみ出された指標である。浜田教授の恩師トービンのQから由来している。

PBRが貸借対照表の資産価格に基づくのに対し、Qレシオは資産の含み益まで考慮に入れた指標である。たぶんに恣意性が働き、時価を使うだけでは間尺に合わず、そのうち土地開発完了後の資産の値上がり期待をカウントしたものまで飛び出した。

相当怪しげな指標ではあったが、買うから上がる上がるから買うというバブルのさなか、誰もあまり細かいことは気にしなかった。

期待に働きかけるということに対しては、やはり危うさを感じざるを得ない。

2013年3月5日火曜日

日銀新体制

大胆かつあらゆる手段をとることで、期待に働きかけて緩やかなインフレを作り出す。この考え方は一理ある。「古き良き時代」を「取り戻す」ための必要条件だろう。(もちろん2の矢3の矢そして4の矢が十分条件)

期待に働きかけるということは、因果関係が必ずしも明確ではないといことを暗示しているわけでもある。このため、経済学上は異論が投げかけられている。議論がかみ合わないのは、この際しょうがない。しょせん経済学に答えはないのだから。前例がないことなので、やってみなけりゃわからない。わずかでも望みがあるなら国民も期待をかける。

無制限な資金供給を辞さないということは、日銀総裁はグローバル金融市場における最大のプレーヤーの一人になるわけだ。そんな人の真意が簡単に市場から見透かされるようでは、うまくいくものもうまくいかないだろう。場合によってはブラフでもとことん突っ張る必要がある。たとえ自信がなくても自信を振りまかねば期待はコントロールできるはずがない。

ところで、日本経済の運命を背負って金融市場と闘っていく気構えと覚悟は本当に大丈夫なのであろうか。

表情や言葉尻からはその内に秘めたる凄味が感じられない。簡単にできると考えているのではないかという口ぶりが非常に気になる。これも作戦のうちならいいのだが。

マーケットの本当の怖さをしらない官僚出身者と研究室で考える学者のコンビで本当にこの前代未聞の挑戦を適切にコントロールできるのであろうか。それこそ途中でおなかが痛くなりましたというのではもちろん済まない。

それだけが妙にひっかかるのである。

2013年3月4日月曜日

金融政策談義

金融政策の効果を巡る論争は、相変わらずさかんで収束の糸口が見えない。

経済学的に決着させようとするからきりがないのであって、実はこの論争は単なる談義なのかもしれない。

つまり、「期待インフレ率が金融政策によって変わるかどうか」ということなら経済学的な色彩が強いが、実態は「期待インフレ率を上げるために前例のない量的緩和をちらつかせる」ことが効くかどうかを茶の間で言い合っているに過ぎない。

賛成派は有効かつ副作用もほとんどないと言う。反対派はひょっとしたら効くかもしれないが、副作用が大きすぎておすすめできないという。しかし、もしちらつかせるだけなら副作用は出ようがない。

実際に効くかどうかは合成された心理的な要素が非常に大きいと思われ、大前研一氏が主張するような心理経済学という範疇に入ってくるのではないか。

そうすると、委縮してしまった日本国民の心理を改善する政策が必要だということだ。金融政策だけが前面に出ているが、ほかにも財布のひもに働きかける方策はありそうな気もする。心理を操作する作戦だから、駆け引きが重要であって、政策当局は真意を説明しないということが局面によっては重要だ。今はそういう局面?

そこまで考えているのだとしたら反対派もかなり納得するのではないか。ただ、真意を説明しないからこそ効くのであって、真意がわからないから反対論議は収束しないというジレンマもある。

2013年3月3日日曜日

金融政策に一石

池尾和人氏のコメント引用
「予想インフレ率を高められるかどうかの核心は、「わざわざ物価水準を高くする必要がなく、望ましくなくても、将来貨幣供給量を増やすに違いないと信用される」こと(credible irresponsibility)は可能かどうかである」

「必要がなく、望ましくないことを将来やると約束して信用してもらうことは、真面目な人や物が分かっている人には、とても無理な話である。例えば、白川日銀現総裁が、将来無責任な行動をとると言っても、誰も信用しない。白川氏であれば、責任ある行動をとるに決まっているからである。それゆえ、クルーグマンの議論は、論理的には筋が通っているが、実践的には有効な提案ではないと私などは考えてきた」

「しかし、物を分かっていなかったり、間違ったことをかたくなに信じ込んでしまっている人が権限のある立場に着けば、credible irresponsibilityが可能になるのかもしれない」
以上

同感するところが多い。
非伝統的金融政策は市場との「騙しあい」の側面が強い。しかし、道理をわかったうえで騙すのと、本当に信じ切って騙すのでは、シナリオが狂った時の対応が違ってくる。
そういう点で、私は少し不安を感じる。
もちろん白川総裁は道理がわかったうえで騙すことができなかった人ということになる。

2013年3月1日金曜日

投資と投機

アベノミクス効果で市場がにぎわっているので、最近投資運用について考えることが多くなった。

まず、投資と投機の違いについて自分なりに整理。

投資とは
 - 事業に資本提供し、オーナー(株主)となりリスクに見合う収益を期待する
 - どちらかというと長期の運用
 - インカムを得ながらキャピタルゲインを狙う
 -  市場全体はプラスサムの状態で、儲かる人が多い
 -  関係者に価値を生み出す
 -  資金が集まりすぎると、投資の期待収益率が低下したり、価格の上昇が需要減供給増をもたらすことで、均衡状態へ戻ろうとする力が働く

投機とは
 -  どちらかというと短期の運用
 -  売買による差額の利益を主たる目的とする
 -  関係者にはなんら新たな価値を生み出さない
 -  あるいは関係者への影響は鑑みない
 -  加熱するとバブルを生む
 -  市場全体がゼロサム、ないしは仲介者の存在分マイナスサムで、ほとんどの人が損をする
 -  対象となるものに稀少性があり、価格が上昇しても容易に供給が増加しないものを対象にする
 -  資金が集まるほど期待が高まり加熱する

まとめると、投資はリスクに見合ったリターンが期待でき、それを実現しようとする行動だといえよう。その行動によって経済・社会全体にもプラスの効果が期待できる。

一方、投機は、多分に利己的な行動で、他人を出し抜いてでも利益を得ようとする行動。行き過ぎてバブルを生むこともあり、経済・社会全体にはプラスの効果は生まない。

投資が正しくて投機が正しくないというわけではない。そもそも、完全に投資と投機を区別はできないわけだし。投機により市場の厚みが増すという効果もある。
ただ、投機と思われる市場・商品・手法で取引を続けることで勝ち残ることは相当難しいということは言えそうだ。

投機的な手法でも利益はあげられる。それが証拠に期待値がマイナスであるギャンブルにおいてさえ、少数のプロ(それで生計を立てる人)が存在する。パチプロ、麻雀、ポーカー、ブラックジャックなど。彼らは、特殊な技能を磨くことで、期待値をプラスにしているのだ。
また、期待値が完全にマイナスとなる他のギャンブルでも、たまたま大きく賭けた時に勝つなどして勝ち逃げできることもある。

証券投資において投機的取引によって収益を上げている人はギャンブルの世界に比べるとはるかに多いだろう。なぜなら期待値がギャンブルよりも圧倒的に高いからである。

ギャンブルはすべて投機だといえるが、証券投資においては投資と投機の線引きが非常にあいまいなので、自分はあくまでも投資を行ってるつもりということも多いだろう。

投資家が投資ではなく投機を行う3つの理由は
①損益以外の要素を楽しむ(ポジポジ病ともいう重い病)
②投機だと気づかないか、最初は投資だったものがいつの間にか投機になってしまった
③不利な戦いだと割り切ったうえであくまでも勝ち逃げを狙う
などが考えられる。
運用のプロといわれる人たちにも③にあたる投機を行うことがある。
成功報酬型のトレーダーや大勝を狙うヘッジファンドに多いだろう。
一般投資家とプロとの垣根はずいぶん低くはなったが、投機的なプロの手法を投資家がそのまままねするのは、危険が大きすぎるだろう。

アベノミクスによって、久々に投資がまっとうに報われそうだ。ただ、金融緩和であぶりだされた投機マネーの動きを理解しておかないとそれこそ、投資のつもりがいつの間にか投機に巻き込まれることにもなりかねない。

こんな時だからこそ、投機に分類される手法も含めて、投資について点検するべき時ではなかろうか。

2013年2月27日水曜日

物価上昇率2%

物価上昇率2%はゴールなのか手段なのか。

原理主義者は2%はゴールであり、日銀はそれを達成する全責任を負うとする。それを真に受けて、金融政策だけでデフレは脱却できると理解している人も多そうだ。

穏健派は、2%を量的緩和のゴールとすることはあくまでも高度で戦略的な「手段」であり、財政政策と成長戦略とかみ合わせることでデフレ脱却は成功するとしている。アベノミクスに賛同する良識者はおおむねこのスタンスなのではないか。

前者と後者では、政府や日銀の取るべきスタンスと潜在的なリスクは大きく異なってくる。
その辺があいまいなことを反リフレ派は一番懸念しており、議論がなかなかかみ合わない最大の原因になっているのではなかろうか。

安倍総理は日銀の独立性はさすがに担保したいと思っているようなので、やみくもに金融緩和だけをを暴走させて通貨の信任を毀損することまでは望んでいないということだ。通貨の信認を維持するということは不可侵でなければならない。その中で、物価上昇率2%を求められるわけだから、新日銀総裁は大変だ。

もし本当に、政府の真意が物価上昇率2%というのは目標と見せかけた手段であるならば、あまり大きな問題は起こらないはずだ。2の矢3の矢との相乗効果で経済成長を取り戻し、その結果として2%のインフレが実現するというのが理想的な流れのはずだ。

実際に何もやらなくても、株価は大きく上昇し、為替もドル高円安に振れている。物価上昇率2%になるまで金融緩和を徹底的にやりかねないと市場参加者は考え、すでに行動を起こしているからだ。そうした意味では、物価2%上昇はゴールだといい続けることこそが最大の効果を生むということである。実際に、そこまで量的緩和を続けるかどうかは今のところ重要でない。反リフレ派の心配は現時点では杞憂ではある。

ただ、円安による輸出企業の採算向上に大きな期待をかけている点は注意が必要だ。確かに円安の即効性はあるが、長期的に円安メリットを享受し続けるためには、世界経済が本当に立ち直るかどうかということが重要なのである。為替政策は不況の押し付け合いという側面を持っているからだ。G20で名指しこそされなかったが、この問題は水面下ではくすぶっている。

あまりにも株価が堅調だったため、しばらく欧州問題のことを忘れていたが、イタリアの政局問題はは改めて、世界経済に不安要因があることを思い出させてくれた。アメリカの立ち直りはペースはゆっくりだが、確実に回復に向かっているように見える。これからは、国内政局もさることながら、海外情勢にも目が離せない。

2013年2月24日日曜日

TPP交渉参加へ

アメリカに巧妙に仕切られたような感じもするが、交渉参加に障害がなくなったようには見える。

TPPも賛否両論対立しやすいテーマだが、金融政策ほどではないだろう。
自由貿易が国全体で考えると富を増やすことは間違いないからだ。
それについてはいくら反対派でも、真面目に議論すれば納得させられてしまうだろう。

問題は国全体では利益になっても、部分的に不利益を被る人たちが出てきてしまうことだ。
この人たちにどう対応するかが難しい問題なのである。

直観的には、これに対応するためのコストが国全体の利益に比べてかなり大きいのではないかという気がする。補助金や特別保護などで、かえって非効率さを残してしまうのではなかろうか。その結果行政コストも余分にかかるに違いない。

だとしたら、あんまり力まないで、ほかのもっと重要な成長戦略に重心を置いたほうがいいのではないかと思ってしまう。

その辺の便益分析をちゃんとやってくれると判断しやすいのでしょうけどね。

2013年2月23日土曜日

エネルギー価格の上昇がデフレを悪化させる

提唱するのは吉本佳生氏だ。
著書の「日本経済の奇妙な常識」や「無料ビジネスの時代」で述べている。



一見、受け狙いのように聞こえるが、氏はデータも揃え合理的に説明している。
理論構成は

①日本の輸入依存度は10%弱で世界最低レベル
②労働分配率は70%以上で、乱暴に言うと商品価格の約7割は賃金である

資源価格が上昇すると真っ先にしわ寄せが来るのが賃金コストの引き下げ
また、大企業は下請けにコスト吸収を押し付ける

人々は所得が伸びないことを前提に消費行動を控える。

量的緩和がまわりまわって国際資源価格を引き上げ、それにもかかわらず消費者物価はそれほど上がらず、むしろデフレ悪化要因のほうが強くでる。

円安による輸出企業の採算向上は、この力に消されてしまう。

アベノミクスでは見落とされている観点である。



2013年2月22日金曜日

久々にすっきり大前研一

大前研一が吼えた
アベノミクスよりすごい経済対策がある

アベノミクスを巡っては議論が空回りしていて、いい加減うんざりしていたが、久々に大前研一がすっきりとさせてくれた。

以下ポイント抜粋

「この22年間の経済状況で、民主党が政権を担当したのはわずか3年半で、ほとんどは自民党政権。つまり日本経済をダメにした元凶は、ピークであった89年以降の自民党政権が舵取りを間違ったからだ。この間、130兆円もの公共投資を実施しながら、日本経済を押し上げることができなかった」

「他国と比べて日本経済だけが異常な状況にあるのは、日本独自の原因があることを意味する」

「日本経済の状況は世界に類例がなく、また21世紀のサイバーやボーダレス経済を織り込んだ経済理論などないのだ」

「はっきりしていることはアベノミクスの「3本の矢」のうちの金融と財政では、「失われた20年」の間に自民党政権が行ってきた経済政策とまったく同じでメンツも同じだ」

「景気回復のポイントは政府が何をやるかではなく、1500兆円の持ち主である個人が何をするかだ。それが政策の中心であるべきなのに、そのことに言及した政治家は1人もいない」

そのあと具体的な施策をいくつか挙げているが、アベノミクスよりもよっぽど筋がいい。
賛同。

2013年2月19日火曜日

年金詐欺事件社長インタビュー

2/19日経新聞朝刊に昨年巨額年金詐欺事件をおこした社長のインタビューがのった。
少しづつインタビューに応じているようだが、当然のことながら新たな事実はない。
ただ、本人の心境が少しづつ語られ始めている。
その中で、驚いた点

①検査期間中もウソを通すつもりでいたこと
②検査期間中、韓国に遊びに行っていたこと(たぶん週末だろうが)
③検査を終えれば新規資金が予定されていたので、それで挽回できると思っていたこと
④まだ、投資運用業をやりたいと考えていること

これに対するコメントは差し控える。

2013年2月17日日曜日

アベノミクス4本目の矢

3本の矢はどれも耳触りのいいことばかりだ
期待感で市場は素直に反応し
国民心理もいい方向へ改善している
最初にできるだけ下駄をはかせてしまおうという戦略は順調に進んでいる
G20で通貨安競争の懸念が指摘されたが、具体的には表面化はしなかった
新興国を刺激しないぎりぎりの範囲で大人の対応をするしかないのだろう

どこかで、財政の制約を考える必要があるのだが、現時点ではそれをにおわすとせっかくの勢いをそぐことになる
一切言及しないのも作戦のうちというのもわかる

しかし、4本目の矢であるべき年金・医療の社会保障改革をいつ、どのように放つかが問われることは間違いない
自民党は参議院選の争点にはしたくないだろう

理想的には、3本の矢で経済成長を取り戻した後にということだが
残念ながら、理想通りに楽な相撲は取らせてはもらえないだろう
金融緩和に支えられた微妙な景気回復が続く可能性が高い
消費税増税のハードルはなんとか越えられるかもしれないが、明確に4本目の矢を放つタイミングは到来しないであろう

そうなった場合、期待を高めて問題を先送りした分だけ、あとで苦しむことになる

結局、先に苦しむか後に苦しむかという問題に過ぎないのだろう

ただ、先に苦しむシナリオを取る場合、成熟債権国家として低成長を受け入れ、それにそった大改造が必要だということになる
世論もそう簡単にはまとまらないだろう

政治的には難しい選択ではあるが、野党はこの路線に狙いを定めるしかないのではなかろうか

2013年2月11日月曜日

ブラックスワン

確率的には生起しないと考えられるが、発生すると壊滅的な被害がおこるものをニコラス・タレブはブラックスワンとよんだ。ハイパーインフレもブラックスワンたりうる条件を備えているだろう。

タレブは自信のことをを「懐疑的経験主義者」と称している。

経験的観測からは「稀な事象が必ず発生する確率」は計算できないという。もちろん科学的知識が通常は役に立つことは認めている。タレブは、我々人間が不都合な結果を考えず、物事にだまされやすいと主張する。さらに、科学者も経済学者も政治家も現在の事象を理解しているという幻想の犠牲者だと信じている。

こうした生起確率の低い事象をテールリスクというが、それはオプションモデルのディープアウトオブザマネーのリスクを定量化できないということである。

リフレ政策はまさにこの「ブラックスワン的なオプション」を売る戦略にほかならない。
わずかなリターンの見返りに壊滅的なリスクを抱えているということだ。

ややこしいのは、反リフレ派がたとえブラックスワンの到来を防げたとしても、それが彼らの成果だとはだれも認めないことだ。反リフレ派はあきらかに歩が悪い。悲観論者として批判の矢面に立つ。やがて根負けしてひとりふたりと地下に潜っていく。

2013年2月9日土曜日

厚生年金基金のムリ筋

厳しい条件を付して、一部の厚生年金基金を存続させる方針になったようだ。

厚生年金基金とは企業年金が国の公的年金の運用を肩代わりし、その資産運用規模を拡大する制度である。
公的年金を肩代わりするわけだから、運用で決められた一定の利回りを出さなければならない。

だいたい、本来の企業年金の約5倍の資産を国から預かっている。もちろん一定の利回りを上回った分は本来の企業年金のプラスにできる。下回ると、掛け金を引き上げるか母体企業が穴埋めしなければならない。

でもこの仕組みは、単に国から5倍のお金を借りて5倍の運用を行っているだけであり、
「代行」という言葉にまみれているか、本質的には、バブル期に流行った財テクそのものである。

本業の不振を財テクで補う

それと考え方は基本的に全く同じ

代行という制度にくるむのではなく、運用リスクをあえてとりたい自信のある企業年金に対しては、あらたな制度を作り、ただ単に運用資金を貸し付ければ済む話でもある。

このように置き換えると、そんなことをする意味がないことはわかりそうなものだが。

2013年2月7日木曜日

白川日銀総裁の苦悩

すっかり、悪玉に仕立て上げられた白川総裁であるが、引き際は意外と男らしかった。誰よりもデフレを克服したかったことは間違いないだろう。以下白川総裁の衆議院解散直前の講演の締めくくりである。全文を読まれることを強く推奨する。

物価安定のもとでの持続的成長に向けて
きさらぎ会における講演

日本銀行総裁 白川 方明
2012年11月12日

おわりに

「意識」や「気分」の問題に触れるために、私が最近いつも言及している事実をご紹介します。それは、金融危機前の2007年と現在の実質GDPの変化に関する国際比較です(図表23)。日本は欧州諸国と同様、現在も2007年の実質GDP水準を下回っています。一人当たりGDPでみると、米国を含め、主要国はリーマン・ショック前の2007年の水準を下回っていますが、落ち込み幅は日本が一番小さくなっています。そして、生産年齢人口一人当たりでは、米欧が危機前の水準を下回っているのに対し、日本は危機前の水準を上回っています。言い換えると、日本は生産年齢人口自体が減少しているため、一国としての成長率は低くなりがちですが、働く日本人の一人一人は、米欧を上回るペースで、付加価値の増加に貢献しています。このことは我々が過度の悲観論に陥るべきではないことを意味しています。しかし、同時に、我々が現状を放置し成長力強化の努力をしなかった場合には、日本経済は今後厳しい状態になることも意味しています。この先10年、20年という期間の平均的な成長率は潜在成長率に規定されます。潜在成長率は就業者数の伸びと就業者一人当たりの実質GDPの伸び率、すなわち、付加価値生産性の伸びに分解できます。足もとの男女別、年齢別の労働参加率を前提にすると、将来の就業者数の推移はかなり正確に計算できます。それによると、2010年代は-0.6%、2020年代は-0.8%と減少します。付加価値生産性については、2000年から2008年という比較的良好な時期をとると、+1.5%となります(図表24)。もちろん、付加価値生産性の引き上げの努力は必要ですが、キャッチアップ過程の終わった先進国経済について恒常的に2%とか、3%といった高い伸び率を期待することはできません。そのことを冷静に認識した上で、付加価値生産性を少しでも引き上げる努力と、労働参加率引き上げにより就業者数を増加させる努力の両方を続けていくことが重要です。

そうした努力の出発点は、今申し上げたような事実の冷静な認識と、日本経済の強みを認識することから生まれる前向きの気分を持つことです。日本経済は、世界のどの国もこれまで経験したことのない急激な少子高齢化という、強い逆風に直面していることは事実ですが、一方で、日本経済の有する強みが客観的に認識されていないようにも感じています。例えば、日本の場合、2000年代半ばに大規模な信用バブルが発生しなかったため、現在、企業の多くは健全なバランスシートを維持しており、金融機関の経営も安定しています。少なくとも「3つの過剰」の解消に追われた1990年代とは全く状況が異なり、成長力強化に取り組む財務基盤は整っています。さらに、わが国が、高齢化やエネルギー制約という世界共通の課題に最初に直面していることは、今後それらへの対応の面でも世界の先頭を走り、日本の存在感を高めていくチャンスだと捉えることもできます。いわゆるソフト・パワーも、決して無視できない日本の比較優位だと思います。先月48年振りに東京で開催されたIMF・世銀総会において、警備や会議運営を含め、日本のイベント運営能力の高さや優れたホスピタリティーを世界に改めて印象付けることができたのも、そうした力の表れだと感じました。

これら様々なプラスの側面にも目を向けながら、切迫感を持ちつつも悲観論には陥らず、日本全体の力を結集して、成長力の強化に真剣に取り組んでいくことが重要です。日本銀行としても、引き続き、デフレから早期に脱却し物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向けて、中央銀行として最大限の努力を続けていきたいと考えています。

2013年2月4日月曜日

アベノミクスの正しい場外観戦の仕方 その2


アベノミクスは金融緩和・公共投資などの積極財政・成長戦略の3本の矢からなる。3本の矢がきちんと的に当たればデフレは脱却できるはず。それに異論を唱える人はさすがにいないだろう。

 

にもかかわらず、リングサイドはあいもかわらず賑やかだ。反対派・懐疑派はアベノミクスの実態は金融政策そのものであることを問題視しているようだ。賛成派の多くは3本の矢を前提にしている。この入口の段階からして議論の前提がすれ違っている。

 

それはとりあえずおくとしても、やはり最大の争点は金融政策の有効性およびその副作用である。

 

「金融緩和が効く、効かない」「これまで日銀の金融緩和が十分、不十分」などなど、議論は尽きることはない。殴り合いに近い論戦も見受けられる。最近では、反対派が緊急出版により巻き返しに出ているようで、否が応でもリングサイドで熱戦を広げる弁士たちの応酬は盛り上がる。そこまで激しくなくても、ワイドショー、居酒屋、家庭の食卓でもアベノミクスが身近な話題になることが多くなっている。ムード的には悪くはない。とりあえず、円安ドル高、株高が進み第一ラウンドが終了した段階でアベノミクスは優勢である。気になるのは、ガソリン価格が150円を超えてきたことぐらいか。

 

とりあえずは順調だしお手並み拝見ということだが、茶の間レベルで気になることを3つ上げておこう。

 

l  そもそも、政権に返り咲いた自民党がこの長きにわたるデフレの最大の責任者であるのだが、うまく日銀を悪玉に仕立て上げたことで、その責任の矛先をうまくかわしたかのように思えること。

l  金融政策さえうまくいけば、国民に直接的な負担をかけなくても済みそうなこと。

l  失敗したら責任を日銀に押し付けることもできるということ。

 

このあたりの動機がヨコシマそうな点は茶の間からしてみれば気になるところだ。特に、あれだけ恫喝に近いかたちで迫りながら「日銀の中立性は大事だし、きちんと担保されている」というあたり、最後の逃げが残されているように思えてしまう。まさか、そんないい加減なことでないとは思うが、正しい場外観戦には欠かせない視点であることは間違いない。

 

結局のところ、金融政策は究極のマネーゲームではないだろうか。場合によっては口八丁手の騙しあいも要求される。通貨の信認を失わせないぎりぎりの対応を迫られ、つかみどころのない市場とどう対話していけるかに尽きるだろう。金融緩和をすればデフレは脱却できると学者が簡単に考える程度のものではないことは、容易に想像はつく。

 
ドルが金兌換をやめた後は、通貨の価値は信任のみで維持されているといってもいい。信任を失った先進国通貨がどうなるかは前例がないことも事実。基軸通貨のドルが刷りまくられているところに、子羊のような日銀がのこのこ参入し、「虚像通貨の世界」をうまく波乗りしていけるのだろうかという不安もよぎる。そうしたことにも思いをめぐらせたうえで、政治家として責任の伴った決断をしていただきたいものだ。

2013年2月1日金曜日

場外乱闘は続く

相変わらずアベノミクスをめぐり場外乱闘が続いている。

あんまり、論戦をするよりもここはお手並み拝見と行きたいところ。

アベノミクスという呼び方もすっかり定着してしまったが、どとらかというと「まがい物」の響きが混じっていることは確かだろう。実際に「まがい物」かどうかはわからないが、ほどよく実態を表現しているので、賛成派も反対派も気持ちよく使っているのだろう。

双日総研の吉崎エコノミストが諸派をうまく3種類に分けてくれている。

1. 中央銀行が人為的に物価を上げることは不可能である派(日本銀行など)
 日本の物価下落は人口減少などの特殊事情があり、金融政策ができることは少ない。むしろ潜在成長力を上げる地道な政策が必要。

 2. インフレ目標や大胆な資産買入などにより、物価を上げることはできるが、危険なのでやるべきではない派(主流派エコノミスト、経済界、日経新聞など)
 ハイパーインフレ、国債の暴落など収拾不能な事態を招く恐れがある。ただし日本経済がいよいよ危機を迎え、最後の手段として考えるのなら話は別。

 3. 上げることができるのに、やらないでいるのは中央銀行の不作為の罪である派(リフレ派、安倍首相など)
 経済学上の実験としての位置づけから、「試してみる価値はある」という見方、さらには陰謀論(日銀はデフレを望んでいる)まで、さまざまな意見がある。

特に「持続的に物価が下落するよりは、マイルドなインフレの方が望ましい」という点について異論を挟む向きは少ないようだ。

インフレを手段として考えているようだが、国民からしてみれば、消費税増税に加えて2%の物価上昇というのは、かなりの負担であることは間違いない。特に家電製品の低下傾向は著しいので、それ以外の生活必需品の上昇率は2%を超えるものになるだろう。
もし、給与増につながらなかったときの失望は相当大きいはずだが、果たしてうまくいくのだろうか。
円安株高ルートでの景気浮揚がメインシナリオだが、期待感のある今のうちにもっと株価が上がらないと成功確率はかなり下がってしまう。この辺でもたついているようでは成功はおぼつかない。

2013年1月27日日曜日

アゴラ記事の補足

先日のアゴラ記事は少し抽象的な内容だったので、私の考えを若干補足します。

①無制限な(前例のない大胆な)金融政策は、程度はともかく効く可能性はある。したがって、やるべきである。ただし、ほかの2本の矢がより重要。

②確率は低いかもしれないが、制御の効かないインフレにつながる危険性があり、その損害は極めて大きい。このリスク認識はイベントリスクとして持つべきである。政府はその責任と覚悟を明示すべき。

③金融政策だけでデフレが解決すると思い込む一般の人たちが増えている。

④政策が手詰まりの中、政治家が日銀にすべての責任を押し付けているように感じられる。

⑤リフレ派にも、総合的に考えたうえでやむを得ない選択肢として賛成している人と、無邪気に賛成している人がいる。

⑥浜田氏は不純物の少ない純粋な学者だと思う。

⑦お互いに対立し論証できない経済理論は、議論するのではなく主張にとどめるべき。

2013年1月25日金曜日

経済学論議

結局言えることは、唯一の正解はないという前提で、お互いに相手の意見や考え方を聞く。それは自分の考えを押し付けたり相手を論破するということではない。ましてやバカにするなどあり得ない。

周りも、特定の考え方に凝り固まるのではなく、それぞれの長所短所をよく理解する。
政治家は価値判断が要求され、結果に全責任を負う。
周りは、政治家がそれらをすべて飲み込んだうえで、最終決定をしているかどうかを監視する。うまくいかない場合のことをどれだけ考慮しているかということが監視のポイントであろう。

2013年1月23日水曜日

アベノミクスの正しい場外観戦の仕方


日曜討論で野口悠紀雄氏と浜田宏一氏の直接対決を見た。それなりに関心は高かったようで、ツイッターでのつぶやきもこの時間に合わせて急増した。アベノミクス3本の矢のうちの一つ量的緩和について激論?というかお互いに一方的に持論を展開した。司会者も議論をあえて深める方向にはもっていかなかったので、結局見ているほうもどちらが勝者か判定のしにくい結果となった。それぞれのサイドで勝った負けたを言い合っている。

 

この論争は経済学の持つ特性と意味を浮き彫りにしてくれたという点では、それなりに意味があったと思う。

 

まず、経済学はそもそも物理学のような普遍的な法則を持つものではないということ。このことを忘れると、つい唯一絶対の解があるかと勘違いし、必要以上の期待を持つことになってしまう。経済学の最大の弱点は、物理学のように実験を積み上げることによって検証できないということある。過去に似たようなことがあっても、すべての環境が一致した経済状況は二度とあらわれない。今日本が経験している未曾有のデフレはまさにそうだ。また、経済学の観測対象となる人間は、実際に観測されているということを認識することで、その行動を変えてしまうという厄介さが付きまとう。経済学は、この問題になんとか帳尻を合わせるために、合理的期待形成やランダムウオーク、最近では行動経済学というような説明の仕方まで登場させているのである。

 

経済学者自身は、経済学がリアルな経済を精緻に解明できないことは当然わかっている。しかし、それを認めてしまうとまず自身の存在意義がなくなってしまう。経済学者が自説をあたかも科学的に証明できるかのように堂々と語るのは、

 

 ◆限界を認識したうえで、立場上うそぶいている

 ◆本当の勉強お宅

 

のどちらかでしかありえない。高次元の微分方程式をはじめとする高等数学を使いこなし、複雑な経済現象に対し様々な仮定を置きそのうえでモデル化し、机の上で証明していくことはそれなりに醍醐味だろう。学問の世界では意義があろう。

 
私たちは、二つの全く対立する経済論争を目にするときに、「ああこれが経済学の現実なんだ」ということを認識しなければならない。結局、終わることのない神学論争なのだ。しかし、現実の世界では結果はひとつしかない。なにが起こるかは経済学者の指摘するうちのひとつかもしれないし、全く異なるものかもしれない。そういうことを理解したうえで、この神学論争を見ていかなければならないし、最終的に政治家がどういう決断をするかを見守るしかない。政治家の決断は途方もなく重いのである。

2013年1月22日火曜日

第2回公判

今日1月22日
年金詐欺事件の2回目公判が予定されている。
保釈中の浅川被告は新聞の取材に応じ始めているようだ。
少ない情報だが、情けない内容。
公判での焦点は、どういう過程で損を重ねただが、今更どうでもいいような気もする。
どうせなら
事件発覚直後にきちんと説明してほしかった。

2013年1月21日月曜日

神学論争に経済学の本質を見る

昨日の日曜討論。浜田宏一氏対野口悠紀夫氏の一騎打ち。
議論はすれ違い、結局神学論争に終わってしまっただけのような気がする。

でも、これが経済学の本質というか限界というか、要は正解のない学問であるということを教えてくれる。

その中で、両者が妥協の上、最低合意できるぎりぎりのラインは

①お金を増やせば、効くときもあればあまり効かない時もある。だだし、全く効かないわけではない
②お金を増やせば、円は安くなる可能性が高い
③お金を増やせば、資産インフレになる可能性がある

というところでしょうかね。

絶対に合意できないのは

デフレが絶対に終わる
国債金利が急騰する危険がある
インフレはコントロールできない

ということでしょうか。これを政治のリスクでどう判断するかですね。やってみなけりゃわからないということですが、責任だけは明確にしておいてほしいですね。

2013年1月13日日曜日

ゴルフ会員権

右肩下がりが続いたゴルフ会員権相場に変化の兆し?

昨日、都内に出たついでに昔からお世話になっているゴルフ会員権業者に立ち寄りました。例年12月は税金還付狙いの処分売り一色なのに昨年はまったく様子が違ったそうです。アベノミクス効果で、売り物が途絶え、現在も買い気一色だそうです。下がり続けるので様子を見ていた人たちが、動き始めたようです。狭い市場ですから、動きは一方通行です。


といっても、値段があるのは、都心に近い、コースがいい、キャディ付の歩き、のうち少なくとも2つを満たしているコースだけ。都心から遠い、コースは普通以下、ビジターでも安くできるコースに値段がないということには変わりない。

今、真剣にメンバーになってガンガンやろうと思っている人には最高のタイミングではないでしょうか。でも、いろんな形で、人や物が動き始めているのは事実です。

2013年1月12日土曜日

年金問題

昨年から温めていたネタを全部、キンドルストアに出してみた。
年金問題は予想以上に関心が低い。
私が、そもそも年金の専門家ではないこともあるが、異常なくらい反応がない。

つなぎに軽い気持ちで出した、アベノミクスについての時事問題本は、コンスタントに出ている。無料キャンペーンでも結構出たが、有料化に戻った後も、勢いは持続している。

コンパクトな時事物はこれからも、タイミングをみて出していきたい。

2013年1月9日水曜日

ヤバいかも私たちの年金



年金の現状についてトンデモナイ部分に焦点をあてて、コンパクトにまとめました。
想定読了時間は40-50分で通勤の友シリーズとして刊行しています。
一度も年金本を読んだことのない方に、とくにお勧めします。

2013年1月7日月曜日

デフレウイルスの正体

国民にとって最大の関心でありながら、なかなか議論が盛り上がらないで不完全燃焼を続けるテーマ。 それが年金問題です。 また、デフレウイルスの正体でもあります。 これまでも、いろんな角度で出版化が行われましたが、残念ながら私が調べる限り売れ行きは芳しくありません。 まず、この壁を打ち破ることそれが本書の最大の狙いです。 ショッキングなタイトルですが、これまでの読みにくい年金本に負けない自信作です。 どうぞよろしくお願いします。

なぜ多くの政策が不発に終わるのか。今本質を考える

もともと、このブログで展開しょうと思っていたものを、急遽方針変更して電子書籍にしたものです。
無料キャンペーンが終わった後も、そこそこ売れているようです。

電子書籍は、こういうタイムリーな動きができるのが最大の利点です。
まだ、あまり時事ネタものは少ないですが、これから多くの経済評論家の方が参入されるのではないかと思います。今のところ、電子書籍の個人出版はハウツーものか小説が大半をしめているようです。てごろな価格の時事ジャンルは夕刊紙や週刊誌に対抗しうる勢力になるのではないでしょうか。

2013年1月2日水曜日

謹賀新年

近くの神社にお参り。
歩いて2分の場所にあった寂れた神社が、2年ほど前に整備された。
山を削り、駐車場を整備し、参道も舗装し、急な坂道は階段となった。
全く無名の神社だが、おかげで参拝客がかなり増えたし、何よりもうちから近いのでありがたい。
元旦は神主までいて、簡単にお祓いまでやってくれる。

ついでに周りを散策。
となりに調整池を整備した公園ができていたのだが、入るのは始めて。
意外と近所でありながら、新たな発見も多い。

いろいろと、開発業者が人を呼ぶために総合的にまちづくりを進めているというのがよくわかる。
相変わらず、宅地造成はどんどん行われており、少しづつ住宅販売も続いている。
いったい、いつまで続くのだろうと思ってはいるが、開発をゆっくり進めているために、常に若い世代の流入があり、街が一気に高齢化する心配はない。
公園を見下ろすマンションはリーマンショック後にたったが、ようやく最近ほぼ埋まったようだ。
公園では、正月早々、小さな子ども達が元気に駆け回っていた。
のどかでいい光景だった。