2012年12月10日月曜日

長期連載 なぜ日本の政策は迷走するのか③

日本経済の現状は、上昇する大きな気球の中にあるエスカレーターのようなものだ。我々が今乗っているのは下りのエスカレーターである。今いる場所からどこまでも続くエスカレーターの降り口は見えない。選挙戦が始まって、少し足元は明るくなった。さいわいなことに、エスカレータを乗せた気球はゆっくりと上昇している。この大きな気球が上昇しているあいだは、我々の位置は地上から見ると上昇している。

1970年代前半までの高度成長期には我々はかなり高速な上りエスカレーターに乗っていた。世界中からその高速エンジンが羨望のまなざしをあびた。その後2度のオイルショックにより運行が不安定になる時期もあったが、80年代後半には円高金利低下を受けてエンジンは再加速した。ところが、調子に乗って加速しすぎてオーバーヒートしてしまった。その後はエスカレーターのエンジンは正常化せず、なぜか逆回転し始めエスカレーターは下り始めてしまった。それでも小泉政権時代には構造改革と輸出主導の景気回復で、一時的にエスカレーターを止めることには成功した。正常回転に戻りかけた矢先にサブプライムショックとリーマンショックに襲われた。現在は、再び下りのエスカレーターに乗っている。

ここでいう、上昇する大きな気球とはなんだろうか。一つは世界経済の成長である。もう一つが、日本人がこれまでに貯めた世界中にある資産とそれからの収益である。たとえ下りのエスカレーターに乗っていても、気球が上昇しているあいだはまだ方策はある。気球内で知恵を振り絞ればエスカレーターのエンジンを修理する方法はまだ残っている。少なくとも上らないまでも下りのエスカレーターは早く止めたい。

しかし、たよりの気球はそもそも悪天候に弱い。リーマンショックという乱気流に巻き込まれて穴があき、一時はかなり高度が下がった。穴は中国が先頭になって塞いだ。その中国の作業員も最近はさすがにお疲れ気味のようだが、かわりにアメリカの補修員が少し元気を取り戻し始めた。いまのところ全体としては保守作業は何とかなっているので気球はゆっくりと上昇を続けている。シートベルト着用のサインは消えたが、乱気流注意報はまだ解除されていない。